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前田建設

請負と脱請負の融合で、
新たな価値創造へ挑戦

前田建設工業株式会社
代表取締役 社長執行役員 前田まえだ 操治そうじ 1997年前田建設工業入社。2002年6月から取締役、常務執行役員等を歴任し、 2016年同社代表取締役社長(現職)、 2021年10月インフロニア・ホールディングス取締役会長、2025年6月執行役(現職)に就任。

前田建設

請負と脱請負の融合で、
新たな価値創造へ挑戦

前田建設工業株式会社 代表取締役 社長執行役員 前田まえだ 操治そうじ 1997年前田建設工業入社。2002年6月から取締役、常務執行役員等を歴任し、 2016年同社代表取締役社長(現職)、 2021年10月インフロニア・ホールディングス取締役会長、2025年6月執行役(現職)に就任。

「請負・脱請負の好循環ビジネスモデル」で付加価値創造に取り組む

社会経済の動向や価値観の変化の中で、インフラの老朽化、担い手不足、環境負荷低減など、さまざまな社会課題が顕在化しています。昨今におきましては中東情勢の不透明化に伴う供給制約の深刻化、AI技術の急速な発展に伴う社会基盤の構造的変化が顕著になっており、それとともに建設業に求められる役割も大きく変化しています。企業はそれら社会の変化や変化の先の未来を敏感に捉え、常に社会から求められる存在であり続けなければなりません。
変化への対応を怠れば、いくら歴史が長く企業規模が大きい企業でも一瞬でその優位性が失われる時代です。我々は総合インフラサービス企業として日頃より技術や安全対策の研鑽に努めると共に、世の中の時流や社会課題にしっかりと向き合い、迅速・果敢に変革に挑戦し、引き続き地域・社会に貢献し続けられる企業を目指してまいります。
当社では2019年度から、「NEXT10」という経営計画に取り組んでいます。そこでは、目標実現のための戦略三本柱として、「1.生産性改革」「2.脱請負事業の全社的推進」「3.体質改善」を掲げてきました。その中で2025年度からは投資事業拡大フェーズとして新中期経営計画(2025-2027)をさだめ、さらなる成長を目指しています。具体的には「脱請負事業の全社的推進」を第一の項目に移行し、脱請負事業をさらに推進していくと共に、請負事業においても脱請負思考をもって、事業主目線、さらには社会的目線にたち、全社で付加価値創造に取り組んでおります。そして、請負事業で培ってきたエンジニアリング力とインフラ運営事業で得た知見とノウハウを掛け合わせ、請負と脱請負を融合させた唯一無二のビジネスモデルに引き続き挑戦してまいります。2026年度からは建築事業本部内に「アリーナ推進部」を新設し、取組みを強化しています。これは今後需要が見込まれるアリーナ案件について、当社が現在運営中のアリーナ案件から得られる知見なども活かしながら事業の上流から下流までをワンストップで対応することを目的とした部署で、当社の掲げる「脱請負事業の全社的推進」を具体化したものです。

ビジョン・戦略の浸透による全社的な脱請負思考の加速

脱請負事業を全社的に推進していくためには、従業員一人ひとりが脱請負思考を習慣化させ、企業文化にまで昇華させる必要があります。そのためには脱請負の実績を積み上げていくと共に、できるだけ多くの従業員と直接かつ継続的にコミュニケーションをとることが肝要と考えています。私自身、全国にある支店を全て巡り、直接従業員に経営方針を説明し対話する「社長キャラバン」を毎年継続的に実施しています。これにより、動画配信やメールだけでは伝えられない思いや理念を伝え、請負事業だけでなく脱請負事業/思考を全社的に推進していく組織文化をつくりあげてきました。当初は当社従業員においても十分でなかった脱請負事業/思考に関する理解も、かなり浸透してきたという実感を持っています。
このような地道な取組みの成果が着実にあらわれてきています。インフラ運営事業(再エネ事業除く)のこれまでの獲得実績は、コンセッションが11事業、PFIが20事業、包括的民間委託が23事業です。これは、国内トップレベルの実績です。今後も新規取組み案件は増加してゆく見込みであり、インフラ運営のトップランナーとしての地位をさらに確固たるものにしていきます。

<当社グループが手掛ける国内の主なインフラ運営事業>
インフロニアHD決算説明会資料より

脱請負事業の競争優位性

当社はこれまで道路コンセッションを始め、スタジアム・アリーナ、上下水道、工業用水道、MICE、空港、再エネと多様な分野のインフラ運営事業において、開発と企画・運営の実績を蓄積してまいりました。昨年度は、IGアリーナ・MUFGスタジアム(国立競技場)の運用が始まり幅広い分野の知見が得られており、ノウハウの標準化とこれからの案件への応用・活用に取り組んでまいります。地方創生に繋がるスタジアム・アリーナ事業案件は着実に増加傾向にあり、昨年度は「豊橋アリーナ」の事業が再開され、新たに「静岡市アリーナ整備・運営事業」を獲得することができました。
水インフラ事業においては国内初のBT+コンセッション事業である「豊橋浄水場再整備等事業」を獲得することができました。「大阪市工業用水コンセッション」、「三浦市下水道コンセッション」で培った整備運営経験に基づいて業務の標準化をおこない課題抽出と解決策の策定、技術開発の推進を早期に取り組んでまいります。
インフラの老朽化が社会問題として顕在化している中、政府によりPPP/PFIは引続き推進され、特に水分野ではウォーターPPPの案件が増加している事から競争力の強化が必須です。2026年7月からインフロニアグループに水ing株式会社が参画しました。水ing社は水道施設運営において日本でトップクラスの会社です。これまで培ってきたノウハウと水ing社の運営・マネジメント力を組み合わせ、上工下水道施設のバリューチェーンを、設計・建設・維持管理・運営まで一気通貫でマネジメントできるグループへと進化します。

脱請負思考による請負事業のさらなる強化

土木事業では脱請負思考を具体化した事業として、人体や生態系への悪影響が懸念されているPFOS・PFOA(有機フッ素化合物)汚染水処理事業を推進しており、当社開発技術である「De-POP’s ION®」(※1)を活用し、複数の事案に対応しました。当社がこれまで培ってきた現場対応力と技術力を最大限に活かし、今後もPFASをはじめとする環境分野においても社会課題解決に向け、技術開発および環境対策への貢献を継続してまいります。
建築事業では付加価値の高い宿泊施設の施工、さらには投資も含めた地域・異業種連携事業などにも取り組んでいます。顧客の事業領域にまで踏み込んだエンジニアリング力を身に着けることによって他社との差別化を図り、利益を創出していきたいと考えております。また受注の前段階から利益率、付加価値生産性、適正工期、施工体制等のさまざまな要因を総合的に評価し受注規律を高度化すると共に、建築設計部門と生産設計部の協働により設計図・施工図・施工計画・見積りの作りこみを最重要視し、設計段階から図面精度の向上、逸失利益を最小化することにより施工高を向上させ、付加価値生産性の最大化を図っていきます。

(※1)De-POP's ION®:自然界で分解しにくい有機フッ素化合物(PFAS)を含有する水を原位置で浄化する技術

三井住友建設のインフロニアグループ参画によるエンジニアリング力強化

昨年9月から三井住友建設株式会社(2026年10月1日よりアルソシア建設株式会社に社名変更)がグループに参画することになりました。同業で数千億規模となる会社同士の経営統合は今回が初めてであり、新たな可能性に向けたチャレンジであります。建設業界では長らく建設会社における経営統合を行っても「1+1が2にならない」と言われてきましたが、その通説に正面から向き合い、両社の強みである技術力・営業力の相乗効果をグループとして最大限に発揮し、価値創出力を高めるための取り組みをおこなっています。
土木事業では、総合評価案件における技術提案を当社と三井住友建設が協業し、インフロニアグループとして一元化を図ることで競争力を高め、受注確立の向上につなげていきます。
建築事業では、三井住友建設が超高層分野で多くの施工実績を持つ「スクライム工法」(※2)と、前田建設が長年にわたり実績を積み重ねてきたシステム工法であるDOC工法を進化させた「HI-DOC工法」(※3)を組み合わせる事によって、さらにシステマチックな施工が可能となり、徹底的な高品質と工期短縮を追求し、超高層住宅案件における圧倒的な市場シェアの獲得を目指しています。

(※1)スクライム工法:梁と柱梁接合部を一体にした、接続部に現場打ちコンクリートを設けない、オールプレキャストコンクリート工法
(※2)HI-DOC工法(High Speed one Day-One-Cycle):建物を工区分けし、作業を標準化・同期化することで、短工期と高効率施工を実現するDOC工法を、より短工期、大量生産化した工法

組織力の最大化に向けた人材マネジメント

当社は人材戦略の基盤として、請負事業で培ってきたエンジニアリング力と、脱請負領域における事業運営の視点やノウハウを融合させることで、事業間の相乗効果を最大化し、組織全体の競争力強化を図っています。分業から連携へと移行する時代に対応するため、部門や事業の枠を超えて社会課題を捉え、その解決に向けて主体的に取り組み、価値を創出できる人材の育成を重視しています。またインフロニアグループ全体で実施している合同研修を通じて、企業の枠をも超えた人的交流や相互研鑽を推進し、グループシナジーの創出にもつなげてまいります。
2026年度の前田建設の中核施策としては、これまで事務・土木・建築など各部門に分散していた採用・育成・キャリア開発機能を新設した人材開発部へと集約しました。これにより、個別最適となっていた研修体系や人材育成施策を全社横断で一元的に運営するとともに、重複投資による非効率の解消を図り、全社的な人材マネジメント体制へ再編しました。
採用においては、インフラ運営部門にて、従来の土木・建築分野に加え、水・環境・都市工学といった専門性を有する学生を対象とした採用枠を新設し、事業の高度化に対応した人材確保を進めています。また、企業の社会的責任として、女性活躍の推進や障がい者雇用率の向上等、ダイバーシティの確保・推進についても重要な経営課題と認識しており、採用・定着の両面で取り組みを強化しています。多様な人材が活躍できる環境整備を進めることで、組織の持続的成長につなげてまいります。
今後も、実践を通じた知識・経験・ノウハウの蓄積と人材育成を一層強化し、変革に挑戦し続ける強い個と組織文化の醸成に努めてまいります。

「守り」と「攻め」を意識し“危機感”を持って日々の業務にあたる

昨年度は、物価上昇や労務費の高騰が進む中、当社は受注時における適正利益・適正工期・適正な施工体制の確保に向けた受注規律の徹底や、逸失利益の最小化により安定した利益を確保できました。
中期経営計画「 INFRONEER Medium-term Vision 2027 」で掲げる高い経営目標の達成に向けて、受注規律のさらなる高度化や、事業主目線、社会目線に立った事業への早期参画、生産性向上に向けた技術開発やDXの推進など、地域企業や自治体、協力会社、グループ会社などと連携した付加価値創造に向けた取組み等をインフロニアグループ全体で進めております。加えて、昨年9月にインフロニアグループに参画した三井住友建設との連携作業は順調に進んでおり、各分野で付加価値創出に向けた連携の基礎が出来てまいりました。当社はインフロニアグループの中核企業としての自負と責任感を持ち、引き続き価値創造に向けた改革にチャレンジしてまいります。
最後に、企業・グループの成長・発展の前提となるのが「安全・品質・コンプライアンス」です。それらの確保・遵守が事業活動の基盤であり、原点です。前田建設全役職員一人ひとりの意識、日々の行動、会話の積み重ねが企業文化を築き上げていきます。「安全・品質・コンプライアンス」を守りながら全員が現状に対する「危機感」を持ち、変化を恐れることなく果敢に自らの改革にも挑戦し、日々の業務にあたってまいります。


前田道路

感謝を胸に、
挑戦と実行で
未来につづく道を拓く

前田道路株式会社 代表取締役社長 富安とみやす 敏明としあき 1993年前田建設工業入社。2020年前田道路執行役員、21年取締役兼常務執行役員、2023年同兼専務執行役員、24年代表取締役兼専務執行役員等を歴任。2026年4月に代表取締役社長(現職)に就任。

前田道路

感謝を胸に、
挑戦と実行で未来につづく道を拓く

前田道路株式会社 代表取締役社長 富安とみやす 敏明としあき 1993年前田建設工業入社。2020年前田道路執行役員、21年取締役兼常務執行役員、2023年同兼専務執行役員、24年代表取締役兼専務執行役員等を歴任。2026年4月に代表取締役社長(現職)に就任。

感謝を胸に、未来へ挑む

2026年4月、前田道路株式会社の代表取締役社長に就任いたしました富安です。
私たち前田道路は、100年を超える歴史の中で常に地域に寄り添い、人々の当たり前の日常を足元から支えてまいりました。そして、これほど長い道のりを歩み続けることができたのは、数えきれないほど多くの皆様に支えられてきたからに他なりません。業界を牽引する立場となった今、その舵取りを託された重責を厳粛に受け止め、皆様への感謝を確かな成長という形で示してまいります。
現在、私たちを取り巻く事業環境は不透明さを増しています。中東情勢をはじめとする地政学的リスクを背景に、原油価格は大きく乱高下しており、当社の主力事業であるアスファルト合材の製造販売もその影響を免れません。2026年3月の価格急騰に際しては、緊迫する状況を丁寧にご説明した結果、多くのお客様に価格転嫁を受け入れていただきました。このような困難な局面にあっても、ほぼ滞りなく安定供給を継続できたのは、当社を信頼し、ご協力くださったお客様のご理解の賜物です。今後、調達環境が平時に戻り安定した際には、速やかに適正な販売価格へと反映してまいります。
他方で、「安定した平時」が持続することはもはや期待できないのが現実です。社会課題は多岐にわたり、刻一刻と状況は変化しています。人口減少に伴う需要減退と深刻な人手不足、災害大国において老朽化が進むインフラ、そして待ったなしの脱炭素対応。これらの課題に真の危機感を抱き、正面から向き合わない限り、私たちの未来は拓かれません。過去から現在への延長線上に、ただ未来を見通せる時代は終わったのです。
当社の企業理念は「ともに、未来につづく道を」です。では、どのようにして未来へと道をつなげていくのか。これからの事業戦略、人材育成、そして私たちが有する財産と目指すべき未来について述べさせていただきます。

変化を成長の機会に:スピード感のある挑戦

経営においては、短期的な成果と、長期的な戦略という「両にらみ」のバランスが重要です。しかし、いずれの局面においても共通して求められるのは、スピード感と変化を恐れない挑戦の姿勢です。市場環境が揺れ動くとき、そこには必ず新たなチャンスが内包されています。その好機は一瞬であり、躊躇していては決して掴めません。変化を前にたじろがず、勇気を持って一歩を踏み出す。この決断の差が、やがて企業の未来を分ける決定的な分岐点となります。
私たちは、中期経営計画をはじめとする定量目標の達成に責任を負っています。これを確実なものとするため、課題の本質を見極め、先手を打ってまいりました。前期においては「受注時規律」と「利幅管理」を最重要課題と位置づけ、これを徹底したことで業績目標を達成いたしました。
しかし、誇らしさに浸っている時間はありません。私たちはすでに新たな成長段階へと踏み出しており、手を緩めることは許されないのです。地域との連携強化、残土事業への再進出、さらには社会課題の解決を自社の成長へと結びつける事業戦略を加速させていきます。ここでは、特に重要な課題である「脱炭素」と「市場縮小への対応」に焦点を当てます。
なぜ「脱炭素」が最重要課題なのか。地球環境の保全という大前提に加え、当社にはトップシェア企業としての重い責任があるからです。当社は日本で最も多くのアスファルト合材を製造しています。合材は高温の状態で出荷し、熱が冷める前に施工する必要があるため、全国に100カ所近い製造工場を展開しています。これは日本のインフラを網羅する強みであると同時に、大量のCO2を排出しているという現実の裏返しでもあります。実に、インフロニアグループ全体のCO2排出量の約9割が前田道路に起因しているのです。
この事実を重く受け止めているからこそ、私たちの環境アプローチは極めて具体的です。 全国でのきめ細やかな活動を支える1,500台以上の社用車については、総数を減らすことが困難だからこそ「すべて電気自動車へ切り替える」という決断を下しました。また、合材を高温に熱するための膨大なエネルギーについても、従来の重油から環境負荷の低い都市ガスへの燃料転換を推進しています。さらに、施工時の温度を低く抑えられる中温化技術(商品名「ecole」)の展開においても、同業他社からリードを保っています。これら環境への先行投資は、短期的にはコストとなるものの、顧客の脱炭素ニーズを先取りすることで、将来的な競争優位につながると考えています。「2030年までに排出量50%削減(2013年度比)」という高い目標を必ず達成し、当社の新たな強みへとつなげてまいります。
また、日本の人口減少が進む中、国内の道路舗装市場が縮小していくことは避けられません。しかし、業界トップを走り、地域密着経営を展開する当社にとって、地域社会の基盤を強化しながら市場シェアを高めていくことは、有望な選択肢の一つです。 2026年4月には、金沢と鹿児島に新たな営業所を開設し、拠点を拡充いたしました。将来的には、M&Aや事業領域の拡大を視野に入れつつ、地域の合材工場とのジョイントベンチャーの組成も検討してまいります。地域ごとの将来性の見極めや、パートナーとの深い信頼関係の構築は不可欠ですが、この厳しい市場環境こそ、既存の地域密着ネットワークをさらに深耕・拡大するチャンスであると捉えています。

企業は人なり:10年先を見据えた「人を基軸とした経営」

「不易流行」という言葉があります。時代に応じて変えるべき変革がある一方で、決して変えてはならない本質があるという意味です。企業経営における本質とは何か。私はそれこそが「人」であると考えます。時代がどれほど変化し、AIがどれほど進化を遂げようとも、想いを抱き、行動を起こし、お客様との信頼を築き上げるのは人以外にありません。まさに「企業は人なり」です。
私は「10年先を見据えた人づくり」を最重要課題の一つに掲げ、「人を基軸とした経営」を推進しています。従業員一人ひとりが誇りとやりがいを感じ、安心して長く働ける環境があって初めて、挑戦への意欲が育まれます。その挑戦の積み重ねこそが、会社の未来を創り上げる原動力となるのです。
ここでも、私たちの取り組みは具体的です。社会や従業員が「いま本当に必要としているものは何か」という声に耳を傾けることから始めています。 これまでに導入した施策は多岐にわたり、従業員本人のみならず、ご家族や協力会社の皆様にまで対象を広げています。業界に先駆けて初年度から完遂した「完全週休2日制」、学びと成長の機会を大幅に拡充した「新教育体系」、若手従業員の将来を支える「奨学金返還支援」、そして配偶者や子どもだけでなく両親まで対象に含めた「みちる手当」(ご家族の生活が満たされたものであってほしいという想いを名称に込めています)など、多角的な支援を展開しています。 さらに、現場を支えてくださる共栄会・瀝友会の皆様に向けて「酷暑手当」も新設いたしました。
そして何よりも大切なのは、全員が「健康」であることです。健康は、身体だけでなく心をも前向きに変えてくれます。昨年度は、定期健康診断の受診徹底にとどまらず、要指摘者全員の再検診を100%実施しました。人間ドックにおける肺CTや脳ドックの必須化に加え、がんなどの早期発見に極めて有効な「PET検査」の費用全額会社負担制度を導入し、その対象を従業員本人だけでなく「配偶者」にまで拡大いたしました。この取り組みにより、自覚症状のない重大な病気が早期に見つかり、「本当に助かりました」と感謝の声をかけられることも少なくありません。その瞬間、この制度を作って本当に良かったと心から実感いたします。
人を大切にする経営を貫くからこそ、「法令遵守と安全第一」は決して譲ることのできない絶対的な規範です。不正や重大災害の発生は、業績以前に社会からの信頼を失墜させ、従業員やご家族に安心を提供できなくなります。だからこそ、安全とコンプライアンスに関する教育には一切の妥協をいたしません。

培った財産と、圧倒的な「やりぬく実行力」

当社には、長年にわたり地域社会と築き上げてきた強固な信頼という財産があります。現在、国内トップのアスファルト合材シェアを誇り、全国約200カ所の営業所および合材工場、そしてそれらを支える共栄会・瀝友会という盤石なネットワークを構築しています。この圧倒的な機動力は他社の追随を許さないものであり、まさに日本のインフラを足元から支える大動脈としての役割を果たしています。
そして、もう一つの最大の財産は「人」です。それは単なるスキルにとどまらず、当社に関わるすべての人の姿勢をも含みます。前田道路に集う人々は、真摯な姿勢できめ細やかに対応し、「やると決めたら最後までやり抜く」強い意志を持っています。
私はこれまで「課題から目を背けず、正面から捉えて、すぐに手を打つ」ということを言い続けて来ました。臆せず挑戦することで現状を打破し、最初の一歩を踏み出す。当社がここ数年、同業他社との差を大きく広げることができたのは、この「人とネットワーク」がスピード感を持って果敢に挑戦し、圧倒的な「実行力」として結実した成果に他なりません。
しかし、ここで歩みを止めるわけにはいきません。現状維持はすなわち衰退を意味します。私たちが見据えるのは、その先にある持続可能な未来です。定量的な業績のみならず、企業文化という定性面においても社会から深く尊敬され、他の追随を許さない存在となること。これこそが、前田道路が目指す未来の姿です。

グループの力を結集:ともに、未来につづく道を

最後に、同業他社にはない当社の圧倒的な強みがもう一つあります。それは、私たちが「インフロニアグループ」の一員であるということです。
現在、進められている「脱請負」の動きを、当社の主戦場である道路分野においても積極的に推進してまいります。その際、グループのシナジーこそが最大の武器となります。具体的には、インフロニア・ホールディングスが有するインフラ運営事業の知見と、当社が培ってきた地域密着のネットワークの融合です。これにより、従来の建設業の枠を超えた、これまでにない価値を創出できると考えています。
今後は、複数の自治体が広域で連携するインフラ管理案件なども増加していくでしょう。自治体における道路管理業務の補完にとどまらず、総合的なインフラサービスを展開するステージへと、私たちの仕事の幅を広げていく未来が見えています。
社会課題は複雑化しており、脱炭素もインフラの老朽化対策も一筋縄ではいきません。しかし、前田道路が誇る「圧倒的な実行力」と、インフロニアグループの「総合力」が掛け合わされば、その力は強大です。あらゆる困難を乗り越え、必ずや大きな成果として結実させてまいります。
高い目標を実現するための答えは、すべて「現場」にあります。私はこれからも現場での対話を何よりも大切にし、皆様とともに汗を流しながら、新たな挑戦を重ねていく決意です。
関わるすべての方々への感謝を胸に、従業員一人ひとりの成長を原動力として、インフロニアグループとともに、次の100年、そしてその先へと続く道を切り拓いてまいります。これからも、ともにつくる前田道路の未来に、どうかご期待ください。


前田製作所

技術で支える社会、
創る未来

株式会社前田製作所 代表取締役社長 伊藤いとう 正義まさよし 1992年前田製作所入社、2017年4月から同社執行役員 新規事業部事業部長等を歴任し、2025年6月同社代表取締役社長(現職)に就任。

前田製作所

技術で支える社会、
創る未来

株式会社前田製作所 代表取締役社長 伊藤いとう 正義まさよし 1992年前田製作所入社、2017年4月から同社執行役員 新規事業部事業部長等を歴任し、2025年6月同社代表取締役社長(現職)に就任。

社会課題解決への取り組み

前田製作所はクレーンをはじめ、工事現場や公共施設などで使われる建設機械や特殊車両、工事設備などを提供していますが、それらを通じた社会課題の解決が当社の使命であると考えています。前田製作所の目指す社会貢献の姿、私はそれを「インフラを支え、人の暮らしや命を守る」という言葉で表しています。
私たちが直面している社会課題の中でも、特に「老朽化」「異常気象」「担い手不足」の3つが当社の事業に深く関係しています。
まず老朽化についてですが、多くのインフラが建設後50年以上を経過し、生活者の安全・安心を脅かすリスクが顕在化しています。こうした中、インフラの維持管理や更新への関心は急速に高まっており、当社が果たすべき役割も一段と大きくなっています。建設業界においても、新規開発中心からリニューアルやメンテナンスへとシフトしており、インフラの維持管理に特化した機械や技術の開発が求められています。今後は、インフラや機械が傷んだり壊れたりしてから直すだけではなく、いかに事前に対策を講じるかが重要となります。当社としても、予防保全の価値を伝え、その実現に向けた取り組みを進めています。
次に異常気象ですが、地球温暖化に伴う災害が増えている中で、私たちは次世代に対する責任を強く感じています。日本では建設機械の電動化は途上にある一方、欧州では急速に進展しています。日本でもGX建機政策が策定され、今後の需要に期待しています。当社は主力製品であるミニクレーン分野で他に先駆けて電動化に取り組んできた優位性を活かして、中型・大型へのラインナップ拡充も進めています。また、カーボンニュートラルに向けて、当社自体も着実に歩みを進めており、社内で使用する電力はほぼ100%で再エネから生まれた電力を使用しています。
担い手不足については、社会全体で深刻な問題となっており、省人化・省力化へのニーズは一層高まっています。
当社はこの課題に対し、「自動化」と「遠隔制御」を軸とした技術開発を推進しています。2025年からは、前田建設工業と共同で、クレーンの遠隔制御技術開発を「ICI総合センター」 において本格的に開始し、展示会ではクローラクレーンの遠隔操作デモンストレーションを実施しました。これにより、特定の技能に依存せず、様々な人が場所を問わず作業できる可能性が広がります。
私たちの業界は、今まさに変革の時を迎えています。電動化や省力化の新しい機材が次々と登場し、これまでの工事現場の在り方は大きく変わろうとしています。多様な人材がそれぞれの環境で機械を操作できる未来が現実味を帯びてきており、それがどのように社会に影響を与えるか非常に楽しみです。
これらの「老朽化」「異常気象」「担い手不足」は、今後の事業戦略においても中心的な役割を果たします。私たちの技術と製品がこれからの社会に貢献できるよう、挑戦を続けていきます。

収益基盤の確立に向けた成長戦略

中期経営計画初年度である2025年度は「付加価値生産性の最大化」を掲げ、フォークリフト事業の拡大やインフラ関連製品の開発、ICT施工提案力の強化、電動化・省人化技術の展開などを通じて、成長に向けた事業基盤を構築しました。
これを踏まえ、2026年度は「収益基盤の確立」を経営目標とし、「海外事業の成長基盤の構築」「国内市場への対応力強化」「グループ連携強化」を柱に、収益力の向上に取り組んでいます。
これらの戦略を着実に推進するためには、従業員一人ひとりが常にユーザー視点に立ち、三方よしの考え方に基づいた行動を実践することが不可欠です。さらに、KPIに直結するデータの見極めと可視化を徹底し、意思決定の高度化とスピードの向上を図ることで、安全と成長を両立した事業運営を実現していきます。
まずコマツ製品の販売・サービス事業においては、2025年度に長野県および愛知県でフォークリフト事業を開始し、建設機械との一体提案による事業基盤の強化を進めてきました。さらに2026年度には三重県で両事業を一体展開し、拠点配置と人員の最適化を図ることで運営効率を高めています。今後、レンタルでは貸出単価の適正化や、リニア関連需要の取り込みにより収益性と稼働の向上を図ります。サービス分野ではDXを活用した受注効率の向上と高付加価値化を進めるとともに、商品販売ではパワーショベルの新モデル「PC138US」などの投入と提案力強化により顧客基盤の拡大を図ります。これらを組み合わせることで、収益の多層化と全体最適による収益力向上を実現していきます。建設機械とフォークリフトのシナジーを最大限に発揮し、アフターマーケットを含めた継続的な収益モデルをさらに進化させていきます。

電線押上アタッチメントの開発

次に、自社製品の海外事業では、これまで推進してきた代理店との連携強化やクレーン新機種の投入による差別化、大手レンタル会社への直販強化を基盤に、地域特性に応じた戦略を進めてきました。今後、米州では都市部や広域レンタルへの製品PRを通じて認知度を高め、大口販売契約の獲得を進めるとともに、欧州ではクレーンアタッチメントによる新たな用途展開や電動化製品の拡充により、競争力の強化を図ります。アジアでは、グループ会社を含めた日系ゼネコンへの提案強化と、インド市場の開拓により、販売網と顧客基盤の拡大を推進していきます。これらの取り組みにより、海外事業の持続的な成長を加速させていきます。
また、既存事業の成長に加え、新たな成長分野への進出にも取り組んでいます。当社では、インフラ分野における需要拡大を背景に、電柱建替時の効率化を図る電線押上アタッチメントを北海道電力ネットワーク様と共同開発しています。今後はインフラ分野への対応力を一層強化し、グループ内外での受注拡大と技術力の発信を通じて、持続的な成長分野の確立につなげていきます。
これらの取り組みを通じて、2026年度はこれまで構築してきた事業基盤を確実に収益へと結びつけ、安定的かつ持続的な成長の実現を目指します。中期経営計画2年目として、その達成に向けた施策を着実に実行し、企業価値のさらなる向上につなげていきます。

人的資本の強化による企業価値向上

私は、当社の持続的な成長と企業価値向上を支える最も重要な経営資本は「人材」であると考えています。今後想定される人材不足に対応するため、当社では新卒採用に加え、専門性を有するキャリア採用やリファラル採用、外国人材の登用など、多様な採用手法を積極的に推進しています。多様なバックグラウンドや価値観を持つ人材が集まることで、新たな発想や付加価値が生まれ、企業としての成長力は一層高まると確信しています。
一方で、人材が能力を最大限に発揮するためには、心身の健康と安全の確保が不可欠です。私は、従業員の健康と安全を経営の最優先事項と位置づけ、あらゆる事業活動に優先されるべきものと考えています。
当社は「健康経営宣言」を掲げ、従業員の健康と安全を基盤とした健康経営を推進しています。働き方改革を土台に、ワークライフバランスの向上やダイバーシティの推進に加え、セルフケア・ラインケアの浸透を通じて、従業員が安心して能力を発揮できる環境づくりを進めています。
また、多様な人材の力を最大限に引き出すためには、従業員との対話が不可欠です。当社では「経営層との意見交換会」を継続的に実施し、営業所を訪問しながら全従業員との対話を重ねています。近年ではテーマを設定した対話を通じて、従業員の創造性や主体性を引き出し、その発揮を習慣化する契機とし、一人ひとりの成長へとつなげています。
現場の声に真摯に向き合い、それを経営に反映し続けることが、組織の一体感と競争力を高める原動力であると考えています。今後も人材への投資を惜しまず、従業員が安心して挑戦し続けられる環境づくりを通じて、企業価値の向上を実現してまいります。

自然資本の保全と持続可能な社会の実現に向けて

私たちは地球温暖化や生息環境の変化によって、多くの動植物が絶滅の危機に直面している現状を重く受け止めています。その象徴的な存在の一つが、創業の地、長野県の県鳥であり絶滅危惧種に指定されているライチョウです。ライチョウの保護は、生物多様性の保全を進めるうえで重要な取り組みの一つであり、地域の豊かな自然環境を守ることにもつながります。
こうした状況を踏まえ、当社は2026年6月に長野県と「生物多様性保全パートナーシップ協定」を締結しました。本協定に基づき、ライチョウ保護活動への支援を行うとともに、従業員が自然環境保全活動に参加する機会を創出し、生物多様性保全に関する普及啓発活動にも取り組んでいきます。
当社は社会や産業を支える企業として、豊かな自然環境を次世代へ引き継ぐ責任があると考えています。これからも生物多様性保全への取り組みを進め、地域社会とともに持続可能な環境づくりに貢献してまいります。

プレキャスト床版架設機の開発

機械技術で創るグループシナジー

当社はインフロニアグループ唯一の機械メーカーです。長年培ってきたメカトロニクス技術と機械メンテナンス技術を基盤に、インフラ整備や維持管理の現場に寄り添った製品・サービスを提供し、「インフラを支え、人の暮らしや命を守る」という使命の実現に取り組んでいます。
様々な社会課題が複雑化する中、当社が果たすべき役割は、機械を提供することにとどまりません。グループ各社の施工技術や現場ノウハウと、当社の機械技術を組み合わせることで、省人化・省力化、予防保全、施工効率の向上につながる新たな価値の創出を進めています。
その一例として、前田建設と連携し、高速道路リニューアル工事における半断面施工に対応した「床版架設機」の開発を進めています。今後は、三井住友建設への展開も視野に入れながら、こうした協業モデルをグループ全体へ広げ、機械技術を起点としたさらなるグループシナジーの創出につなげていきます。
引き続き、電動化・自動化・遠隔制御などの先進技術の開発・高度化に取り組み、グループ内外の連携を一層強化することで、総合インフラサービス企業を目指すインフロニアグループの成長に貢献してまいります。


日本風力開発

再エネの
付加価値を高めながら
長期安定的に提供する

日本風力開発株式会社 代表取締役社長 藤谷ふじたに 雅義まさよし 1996年前田建設工業入社。2023年執行役員 経営革新本部事業戦略担当 兼 再エネ部長、2024年常務執行役員(現職)等を歴任。2024年1月日本風力開発取締役、同年6月代表取締役社長(現職)に就任。

日本風力開発

再エネの付加価値を高めながら
長期安定的に提供する

日本風力開発株式会社 代表取締役社長 藤谷ふじたに 雅義まさよし 1996年前田建設工業入社。2023年執行役員 経営革新本部事業戦略担当 兼 再エネ部長、2024年常務執行役員(現職)等を歴任。2024年1月日本風力開発取締役、同年6月代表取締役社長(現職)に就任。

カーボンニュートラルと地域共生に取り組む

日本風力開発グループは、「風力発電の普及を通じ、エネルギー問題の解決と地域の発展に貢献する」というミッションを掲げています。このミッションは、私たちが事業活動を通じて社会課題の解決に取り組む姿勢を示すものです。私たちの活動は、単なる電力供給を超え、地域とともに成長し、地球環境の保全に寄与することを使命としています。
サステナビリティの観点から見ても、当社のミッションはCSV経営そのものであり、従業員一人ひとりが日々の業務の中で、社会や地域に貢献することを意識して取り組むことが大切だと考えています。
さらに、ガバナンスについても2024年に法務コンプライアンスや内部監査の体制を刷新し、インフロニアグループの水準に合わせて組織の高度化・定着化を進めています。これにより、より健全で持続可能な経営基盤の構築を目指しています。
現在、エネルギーを取り巻く環境は大きな変革の時期に差しかかっています。
IEA(国際エネルギー機関)では、世界のデータセンターの電力消費量が2024年から30年までに倍増すると予測しており、データセンターや半導体産業の拡大に伴い、これまで減少傾向にあった電力需要は増加に転じています。
他方、昨今の国際情勢を背景に、エネルギー供給の不確実性が高まる中、EUをはじめ各国の政策は「脱炭素と産業競争力の両立」へと舵を切っています。環境問題はもはやCSRの範疇を超え、経済安全保障と不可分な「事業継続の前提条件」となりました。気候変動への対応が企業の競争力に直結するこの時代において、再エネは脱炭素のみならず、エネルギー自給率向上と安全保障という二つの課題を同時に解決しうる数少ない手段であり、風力発電事業者としての当社グループが果たすべき役割は、ますます重要なものとなっています。
2025年2月に閣議決定された「第七次エネルギー基本計画」では、2040年までに再エネ(以下、再エネ)の導入目標が電源構成の40~50%とされ、そのうち風力発電は4~8%程度とされています。昨今のエネルギー政策や技術革新によって、再エネの導入は加速していますが、その普及にあたっては、地理的条件や地域の合意形成の難しさ、コスト上昇など、さまざまな課題も顕在化しています。
未来のエネルギー供給を支えるためには、技術革新が欠かせません。例えば、太陽光については、従来のパネルからペロブスカイト等の新素材に移行しつつあります。これらの技術は、屋上や壁面といった従来導入が難しかった場所への設置を可能にし、導入の敷居を下げる役割を果たします。
風力についても、風車の大型化と並行して、設置場所の選択肢拡大が進んでいます。平らで緩やかな地形に加え、山の尾根筋など設置難易度の高い地形への導入も進んでおり、これまで活用が難しかった場所からの発電が期待されます。ただし、大型化には輸送や建設の技術革新も必要となります。従来以上に用地の造成などで土木分野の高度な技術力が求められますが、こうした場面において、前田建設をはじめ、インフロニアグループとしての技術力やシナジーを発揮できると考えています。
コスト上昇への対応については、資材や人件費が上がる中で、電気の価格への反映が遅れています。電気は公的な要素もあるため、販売価格にすぐには反映されにくい状況があります。ただし、再エネには“電気の価値”に加えて“環境価値”という側面があります。特に、AIやクラウドサービスの拡大に伴い電力需要をけん引するグローバルプラットフォーマーや大手テクノロジー企業は、ネットゼロ目標の達成やESG責任の遂行に向けて、事業活動に必要な電力に非化石電力由来の電力を積極的に求めています。環境価値に対する需要は国内外で着実に拡大しており、環境価値は今後ますます高まる見込みです。電気の価格はなかなか上昇しにくいですが、環境価値の部分は今後確実に上昇していき、その結果として再エネの総合的な価値も高まると考えています。
当社は、カーボンニュートラルへの貢献の他、風力発電所を設置する地域との共生、地域活性化も重要な課題と捉えています。風力発電所の設置にあたって、地域の合意形成は当社の事業の根幹を成す重要な要素です。再エネは多くの利点がありますが、発電所建設による自然破壊や災害リスクを懸念する声もあります。しかし、設計や工事の段階でしっかりと対策を行えば、安全な運用ができます。当社は地域の方々に対し、安全性や環境負荷について丁寧にご説明し、ご理解いただきながら、地域のメリットを最大化していきたいと考えています。例えば、道路整備や草刈りといった貢献だけでなく、「風」はその地域の資源であるため、その発電所で生まれた電気をその地域で使っていただけるような提案も積極的に行っていきます。さらに、発電所のO&M(オペレーション&メンテナンス)を通じて、地域の雇用を生み出す取り組みも強化していきたいです。これは、人材確保の難しい時代、当社にとっても非常に大きなメリットになります。

より総合的なサービスへと事業領域を拡大

中期経営計画「 INFRONEER Medium-term Vision 2027 」で掲げた「戦略三本柱」のうち、「インフロニアのビジネスモデルに基づく収益基盤の確立」については、電力事業のバリューチェーン下流への事業領域拡大を図ります。当社は風力発電所の開発・建設・O&Mを行っており、すでに発電事業における「総合インフラサービス企業」の性格を有していますが、今後はFIP制度 ※1への移行に伴い、これまで発電開始をゴールとしていた事業から、さらに下流の領域に拡大していきます。具体的には、新たな収益を確保手段として、需要家への電力の直接供給を行うべく、2026年1月に「小売電気事業者」登録をしました。本年4月より前田道路の合材工場などインフロニアグループ内への供給をスタートし、今後、グループ外への需要家へ徐々に拡大していく予定です。これまでのFIT制度 ※2では固定の買い取り価格で一定期間の買い取りが決まっていましたが、FIP制度への移行により、今後は電気の需給バランス管理と直接電力需要者との取引が求められています。FIP制度は、再エネの自立を促進し、持続可能なエネルギー市場の構築に寄与するものと考えています。私たちは、この新たなビジネスモデルを活用し、発電から小売までのバリューチェーン全体において競争力を高めていきます。 そのため、専門的ノウハウを持った即戦力人材の確保にも注力していく考えです。また、グループシナジーを活かし、共同開発や需要家開拓など営業力の強化にも取り組んでいます。

「付加価値の最大化」については、エネルギーインフラを長期安定的に維持していくためのO&Mの高度化に取り組んでいきます。20年以上O&M事業を営む中で蓄えてきたノウハウやビッグデータをもとに、DXの技術を活用することで、発電所の稼働率向上や運用の自動化・省力化、経年施設の長寿命化などを実現します。
このような当社が培ってきた高度なO&M技術を最大限に活用すべく、2025年度より、運転年数の経過している他社発電所を買収し、高度なO&M技術と売電事業でバリューアップする「風車再生事業」を開始しました。その第1号案件として、本年4月から青森県の竜飛風力発電所を取得しました。同機種におけるこれまでの運営・保守の知見を最大限に活かし、発電所のバリューアップを推進しています。

O&Mの様子1
O&Mの様子2

人材戦略:ユニット型組織を目指す

当社は様々なバックグラウンドを持ち「風力事業をやりたい」という高い志を持つ従業員が集まった多様性のある組織です。従業員一人ひとりのレベルが高い一方で、今後は個人の力を組織全体として発揮できる体制づくりが重要な課題となっています。特に、地域の理解や合意形成には、経験則や暗黙知に頼る部分が多くあり、これらは体系化しにくく、属人化しやすい傾向があります。しかし、私たちはこれまでの経験を基に、知見を少しずつ整理し、組織のノウハウとして蓄積しています。これにより、属人性を排除し、標準化を進め、誰もが同じやり方で仕事を進められる仕組みづくりに取り組んでいます。この取り組みは、属人化の解消だけでなく、従業員の育成や業務の効率化にもつながります。経験豊富な職人のノウハウを形式知に落とし込み、次世代に継承していくことが、今後の組織の強化に不可欠だと考えています。
具体的には、「体質強化・改善」として、2025年に組織改編を実施しました。組織をフラット化し、開発・調査・エンジニアリング・ファイナンスといった機能要素と、プロジェクトチームを縦と横の軸で組み合わせたマトリックス組織とすることで、横の連携を強化し部門横断的なプロジェクトの推進力を高める狙いです。その結果、部門間の横断的な連携が活性化し、プロジェクトごとの意思決定の迅速化と実行スピードが向上しています。
また、階層別研修や専門教育も強化し、若手やミドル層には、交渉力や自己啓発を促す研修を行い、経験豊富な従業員には、専門知識だけでなく、マルチタスク能力やリーダーシップを養うプログラムを導入しています。社内の専門家を講師として招き、実践的なスキルアップを図る仕組みも整えつつあります。こうした教育投資を通じて、組織全体の生産性向上を目指しています。
人材確保の取り組みについては、これまでのキャリア採用だけでなく、新卒や第二新卒の採用にも力を入れ、即戦力と長期的な人材育成の両立を図っています。採用後の定着のためには、仕事のやりがいと職場の風通しが影響してくると理解していますので、やりがいを持ってもらうために、今後のキャリアプランの例を示し、イメージしてもらうようにしています。従業員とのコミュニケーションも重視しており、子会社を含めた全事業所をまわり、従業員と直接対話を行っています。WEBを組み合わせて地方の従業員含めて少人数ごとのランチ座談会も行っており、これを約2年続けてきました。従業員からは仕事のことだけでなく、働き方や将来の夢など、さまざまな話を聞くことができる貴重な機会となっています。

懇親会の様子1
懇親会の様子2

シナジーを生み出すための取り組み

当社がインフロニアグループに仲間入りしたのは2024年1月ですが、技術共同開発、取引先の相互紹介・情報共有などを行っています。
先述した通り、風力発電施設の工事の部分で、前田建設と技術力やコスト低減について検討していますし、最近では人材交流やローテーションも進めています。従業員が異なる事業や部署を経験することで、課題解決のヒントを得て、新たな視点を持つことに役立つと考えており、継続的に行っていきたいです。
2025年に工事が開始された三森峠風力発電所は、前田建設がEPCを担当し、協力会社として前田道路も参画しています。当案件は、インフロニアのグループ会社が協働して進める第1号案件です。グループ各社のリソースを結集した初めての本格的な協働プロジェクトとして、その意義は極めて大きいものです。さらに現在進行中の開発案件においても、前田建設と三井住友建設の両社と、人材交流を含め設計段階から密接に連携しています。このようにシナジーを最大化する共同開発体制を確立し、今後もこうしたグループ連携による大規模プロジェクトを加速させていく方針です。グループとして、単なる資本や労力の共有だけでなく、各企業の得意分野を活かし合うことにより、効率的かつ効果的に事業を推進することができると考えています。
インフロニアグループに加わって2年あまり。さらなる技術開発や営業情報の相互活用などの面でグループシナジーの強化を推進していきます。当社の強みである開発力を発揮して、事業を継続的に生み出すとともに、O&Mをはじめとした運用サービスを高度化し、インフロニアグループの一員として高付加価値な再エネを、需要家にワンストップで、かつ持続的に提供していく会社を目指してまいります。

三井住友建設

人と技術の力で、
世界中に豊かな景色を。

三井住友建設株式会社
代表取締役社長 執行役員社長 柴田しばた 敏雄としお 1985年三井建設(現、三井住友建設)入社。2018年から取締役、執行役員等を歴任し、2024年同社代表取締役社長(現職)。2025年9月インフロニア・ホールディングス執行役(現職)に就任。
※三井住友建設は2026年10月よりアルソシア建設に社名変更

三井住友建設

人と技術の力で、
世界中に豊かな景色を。

三井住友建設株式会社 代表取締役社長 執行役員社長 柴田しばた 敏雄としお 1985年三井建設(現、三井住友建設)入社。2018年から取締役、執行役員等を歴任し、2024年同社代表取締役社長(現職)。2025年9月インフロニア・ホールディングス執行役(現職)に就任。
※三井住友建設は2026年10月よりアルソシア建設に社名変更

新たな理念のもと、未来への一歩を踏み出す

建設業界を取り巻く環境は、大きな転換期を迎えています。資材価格や労務費の高騰、技能労働者の高齢化や担い手不足といった課題は、より深刻さを増しています。一方で、頻発する地震、激しさを増す集中豪雨などから国民の安全を守るための国土強靭化、老朽化したインフラの維持更新、カーボンニュートラルへの対応など、社会的要請も拡大しています。加えて、ホルムズ海峡問題で浮き彫りになった原油由来材料のサプライチェーンの脆弱さなど、新たな社会問題も生じ、まさに混とんとした先が見通せない世界情勢となっています。私たちは、このような様々な変化を単なる環境変化として受け止めるのではなく、自らを進化させ、新たな価値を創造するための”機会”と捉えています。
2026年10月、当社は「アルソシア建設」へと社名を変更し、新たな一歩を踏み出します。この節目にあたり、当社は新たな理念体系を制定しました。PURPOSE(存在意義)を「人と技術の力で、世界中に豊かな景色を。」とし、MISSION(果たすべき使命)を、「私たちは、インフラを支える企業として、様々なステークホルダーとともに、持続可能な価値創造に取り組みます。」と掲げました。お客様、利用者、従業員、パートナー、そして地球環境という多様なステークホルダーと共に歩みながら、社会の持続的な発展に貢献していくことが、私たちの存在意義であり、使命であると改めて定義し、引き続き社会の持続的な発展のために、インフラ整備に貢献していく姿勢を明示しました。

事業規模の拡大とリ・ストラクチャーへの取組み

当社は、特定不採算工事の完結と経営統合による財務体質の抜本的改善とシナジー効果の早期実現によって、事業規模拡大フェーズに入っています。工事の採算性も向上してきており、これからは、いかに事業規模を拡大し、生産性を上げて利益の最大化を図っていくかがポイントです。当社の優位技術である橋梁や超高層住宅など、それぞれの設計及び施工技術にさらに磨きをかけ、技術を継承しながら、企業価値向上を果たしていきます。
一方、日本のインフラや建築物の多くが、建設から50年を超え、本格的な維持更新の時代に入りました。土木分野では橋梁床版取替やトンネルのインバート更新など大規模な更新事業を全国で展開し、建築分野では修繕・リニューアル工事に加え、免震レトロフィットなど、維持更新の領域で多くの実績を積み重ねてきました。今後は、橋梁の架け替え、上下水道施設の再構築、現在活況を呈している都市再開発案件など、大規模なインフラの再構築に、より積極的に取り組んでいきたいと思っています。
更に、より高品質で次の50年を支える構造物の社会実装も行っています。鉄を使わないメンテナンスフリーな超高耐久橋梁Dura-Bridgeの開発・現場実装、超高層建築分野ではプレキャスト部材を用いた急速施工工法であるスクライム工法を広範囲に適用し、高品質・高耐久なインフラを社会に送り出しています。これまで培った技術と実績で、新設インフラ建設を一定規模で継続しながら、維持更新分野へも積極的に参画し、次世代に「インフラとそれを創る技術」を、確実に引き継いでいく、これが、建設を担う事業会社である我々の使命と考えています。

脱炭素、新エネルギー領域への挑戦

気候変動はますます顕著となり、日本の夏も年々厳しさを増しています。一方、AIと半導体関連事業の急成長により、電力需要は拡大していく見通しで、CO2削減と発電量確保の両立を求められる局面に入っています。こうした中、次世代エネルギーとして水素や、その輸送・貯蔵を担うエネルギーキャリアであるアンモニアへの期待が高まっています。しかし、コスト負担の在り方やハンドリングに関する技術的課題なども多く、普及は急速には進まない状況です。ホルムズ海峡問題もあり、原子力再稼働をベースとしながら、LNGに回帰するのか、風力発電は促進されるのか、他の発電をどうミックスしていくのか、発電コストとCO2発生量のトレードオフを解決する道筋はいかなる方向なのか、どの分野でイノベーションが起きるのか、世の中の動向に幅広くアンテナを張る必要があります。カーボンニュートラルと新エネルギーへの挑戦は、建設業にとっては、社会的要請にこたえるだけでなく、ビジネスチャンスを見つけて資源を投資していく、事業活動そのものの変革につながると考えています。
当社は、これまでも石炭・LNG火力発電の土建工事で設計施工の実績がありますが、今後は、アンモニア貯蔵・水素製造施設、バイオガスプラント、あるいはコンクリート製浮体式の洋上風力などの新たなエネルギー分野への挑戦を模索していきます。
自社開発で特に期待しているのが、水上太陽光発電の洋上への展開です。これまで、ため池などで実績を積み重ねてきましたが、現在、NEDOの洋上実証実験に取り組んでおり、将来、無限の水面のある洋上への展開を実現すれば夢は広がります。また、自社のCO₂排出量削減に向けて、材料由来のCO₂を最大約90%削減できる低炭素コンクリート「サスティンクリート」の開発・実装を進めるとともに、ZEB・ZEH案件の拡大にも取り組んでいます。
今後も、建設業で蓄えた知見をもとに、業種の垣根を越えて脱炭素、新エネルギーへの挑戦は継続してまいります。

エンジニアリング力を生かして脱請負領域に挑戦

社会基盤の持続的な維持管理のために、建設業に求められる事業範囲が、「つくるだけ」から「つくって、守り続け、運営する」へと変わりつつあります。老朽化するインフラの更新需要が高まる一方、公共財政には限界があり、民間の資金・技術・経営ノウハウを活用する必要性がますます高まっています。当社はこれまで、上下水道施設や焼却施設、あるいは給食センターなど公共施設のPFI事業に、DBO、EPCで参画し、実績を積んできました。これらの領域では、EPC(土建工事の設計施工)としてのケイパビリティ、すなわちエンジニアリング力を有しており、陸上風力発電やトレンドとなっているスタジアム・アリーナを含めて、インフロニアが進める様々な事業に、まずは、EPCの領域で参画していきたいと考えています。さらに、上下流の領域、いわゆる脱請負についても、インフロニアグループの知見やネットワークを活かし、社会インフラの価値を長期にわたり守り育てるインフラサービス領域へと事業領域を広げてまいります。特に期待しているのは、水ingのグループ入りによるウォーターPPPへの早期参画です。

海外事業の進展

私たちは55年以上にわたりアジアを中心とした海外展開を続けてきました。土木分野ではODAを通じてフィリピン、インドネシア、ベトナムなどの東南アジアを中心に、橋梁・道路・鉄道や近年では地下鉄事業といった大型プロジェクトを数多く手がけてまいりました。日本の優れた技術力を現地に展開することで、安定した収益を確保しています。当面は、アジア諸国におけるODAを中心に注力してまいりますが、将来を見据え、アフリカや大洋州などへも領域を広げて取り組むとともに、ODA以外の資金によるプロジェクトへの参画、あるいはインフロニアとの協働によるPPPなどへの参画を検討していきます。建築分野では、インド・シンガポール・タイ等において、日系企業の進出に伴う工場・物流施設・商業施設の建設を長年にわたり担っております。特に、インドについては現在日系企業の進出が加速しており、シェアNO1を維持するとともに更なるストレッチを図っていきたいと考えています。同時に、非日系企業からの実績を積み上げ、将来は、インドを拠点としたアフリカの印僑国への進出も模索していきます。
今回、改めて私たちの経営理念を定めるにあたって、PURPOSEの中に「世界」という言葉を含め、日本の技術で世界のインフラを整備し、その社会的便益を長期にわたり世界に届けていくことが私たちの事業の存在意義であると明確にしました。今後も、世界を舞台に培った技術力、人材、ネットワークを礎に、世界のインフラ整備と経済発展に貢献し続けてまいります。

<当社の海外事業実施国>

人と技術を未来へつなぐ人材戦略

当社のPURPOSEに掲げた「人と技術の力」は単なる言葉ではありません。建設事業の根幹は、現場で真摯にものづくりと向き合う人の力であり、その力を磨き続けることで技術は進化し、社会価値へとつながります。
当社は「人材(=人財)基盤の強化」を重要な経営課題と位置づけ、従業員一人ひとりが能力を発揮し、成長できる環境づくりを進めています。職務や役割に応じた処遇の実現、公正で納得性のある評価、従業員の自律的なキャリア形成の支援などを通じて、従業員の挑戦と成長を後押ししてまいります。
DE&Iの推進も重要なテーマです。性別、年齢、国籍、障がいの有無、育児や介護など、従業員一人ひとりの多様な事情や価値観を尊重し、多様な人材が活躍できる職場づくりを進めてまいります。その根底にあるのが、新たに定めた4つのVALUES、Have Integrity. Master Yourself. Cross Borders. Lead the Way.です。これらは、従業員一人ひとりが大切にすべき価値観であり、当社のブランドを内側から支える行動の軸で、組織全体に根付かせることが、「アルソシア建設」という新たなブランドを本当の意味で育てることだと考えています。

ステークホルダーの皆様へ(変わらぬ信頼を礎に)

10月をもって、三井住友建設から社名を変更します。しかし、誠実なものづくりへの姿勢、お客様や協力会社との信頼関係、現場で品質と安全を守り抜く姿勢は一切、変わりません。これまで積み重ねてきた信頼を大切にしながら、新しい時代にふさわしい価値を提供し続ける企業へと進化してまいります。
お客様には、人と技術を結集し、期待を超える価値を提供してまいります。三井グループ、住友グループ各社の皆さまにおかれましては、これまでのご信頼にお応えできるよう、今後とも変わらぬお付き合いをいただけますと幸いです。
協力会社をはじめとするパートナーの皆さまとは、公正で信頼ある関係のもと、win-winの関係を構築し、ともにより良いものづくりを追求してまいります。そして地域社会や利用者の皆さまには、安全・安心で持続可能な社会基盤を提供することで、日々の暮らしと未来を支えてまいります。

「ジャカルタ都市高速鉄道事業(フェーズ2)(第一期)CP203工区」において、1,000万時間無災害を達成

あしたの景色を創る

インフロニアグループのVision「どこまでも、インフラサービスの自由が広がる世界。」と、私たちのPURPOSE「人と技術の力で、世界中に豊かな景色を。」は、目指す方向を共にしています。当社は、グループにおける中核企業の一社として、これまで培ってきた技術力とネットワークを活かし、同時に、グループ各社との連携を深め、当社単独では実現できなかったであろう新たな価値を、社会に届けてまいります。
昨日より今日、今日よりあした、世界が少しずつ前を向けるような「あしたの景色」を、これからも皆さまと共に創り続けていきます。