インフロニアグループは、事業基盤である自然資本の持続可能な利用と共生に向けて「気候変動」「資源循環」「生物多様性」「汚染防止」「水の安全保障」などの分野を軸に、長期的な視点での取り組みを進めています。加えて、インフロニア独自の「地球への配当」を通じた諸活動を推進しています。
気候変動に関する方針・考え方
気候変動は当社グループの重要経営課題の⼀つであり、官民連携によるインフラの維持管理・修繕・更新や新規建設において、カーボンニュートラルの取り組みが加わった新たな市場が急速に拡大すると認識しています。当社は2050年までのCO2排出量を「実質ゼロ」とし、気候変動への取り組みを強化するとともに、エネルギー使用の削減と効率化に取り組んでいます。
TCFD提言に基づく気候関連の情報開示
ガバナンス
当社グループでは気候変動を重要経営課題の一つとして認識しています。大きなリスクとして危機意識を強く持ちながらも機会として捉え、中長期経営ビジョンを掲げ、実現に向けた具体的な取り組みを実行しています。気候変動に関わる基本方針や重要事項については定期的にサステナビリティ委員会にて検討を行うとともに、取締役会の監督が適切に行われるよう体制を整えています。
戦略
当社グループは、気候変動が自社の事業に大きな影響を及ぼすものと認識しています。2022年度に実施したTCFD財務分析の結果をもとに、エネルギーコスト、低炭素建材の影響、新たな市場への対応といった重点課題を抽出し、実施計画及び財務評価モデルの検討を開始しました。自らがエネルギーを大量に消費する需要家として、投資指標のインターナルカーボンプライシングを加えることで追加性のある再エネ導入を推進します。官民連携によるインフラに維持管理・修繕・更新や新規建設において、カーボンニュートラルの取り組みが加わった新たな市場が地域経済に与える付加価値を可視化することでステークホルダーエンゲージメントを高度化し、市場を拡大していきます。
リスク管理
2030年を想定した気候変動シナリオに基づく「移行」と「物理的変化」に関するリスクと機会、及びその対応を示します。
分類 | リスク /機会 |
内容 | インパクト評価(2030年度) | ||
---|---|---|---|---|---|
1.5℃ シナリオ |
4℃ シナリオ |
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移 行 |
調達 | リスク | 調達先が、炭素税又は再エネ導入等の低炭素化コストを製品価格に転嫁した場合のコスト増 低炭素製品、低炭素燃料への切り替えによるコスト増 | 中 | 中 |
直接 排出 |
リスク | 工場設備・EV車両等への投資、再エネ導入コスト、炭素税等 低炭素商品開発・低炭素施工研究開発(費⽤対効果、投資効果) | 大 | 中 | |
製品 サービス |
リスク | 環境配慮型製品・サービス対応の遅れによる機会損失 価格優位性喪失に伴う顧客流出 | 大 | 中 | |
機会 | ZEB拡大、革新的建機(EV等)市場の拡大、低炭素建材施工の提案 再生可能エネルギー事業の需要増/官民連携市場の拡大 | 大 | 中 | ||
物 理 |
調達 | リスク | 災害の増加に伴う保険料増加 工場や輸送網の被災による、代替困難な特殊品の納期遅延、災害の激甚化による調達への影響 | 小 | 中 |
直接 排出 |
リスク | 災害激甚化による工事の遅延・保険費増 施設稼働率・来客数の低下による収益低下 作業員の健康影響、生産性低下、製造工程への悪影響 空調エネルギー使⽤量増加に伴うコスト増 | 中 | 中 | |
製品 サービス |
リスク | 風水害の増加による施設利⽤客の減少、施設稼働率の低下 風水害等の増加による施設維持管理費の増加 移動・輸送・リゾート系開発事業の採算性の低下 | 中 | 大 | |
機会 | 災害復旧工事、災害対策工事(堤防・河川改修)の増加 建造物の強靭化・機能向上(屋内型等)、インフラ維持管理(点検、評価・診断、補修・補強、LCCO2可視化)サービス | 中 | 大 |
調達 | 本支店、ICIの使⽤電力によるCO2の全量をFIT非化石証書によりオフセット |
協業によりサプライチェーン・ライフサイクルを通した調達改革、業界プラットフォーム構築 | |
直接排出 | ゼロカーボン合材の実現に向け、低炭素燃料の活⽤を推進するとともに、アンモニア水素バーナー等革新的技術の研究、サプライチェーン排出量の削減に向けたシナジーの発揮 |
グループのRE100実現のため、ネットワークを活かして再生可能エネルギー事業を拡大 | |
製品・サービス | ZEB建設・改修、再エネ施設の整備、建築環境設計(省エネ、省CO2)の高品質化、効率化に関する開発、災害対策・復旧工事に関する技術開発 |
低炭素合材・建材の開発、PV、地中熱等再生可能エネルギーの効率化、省エネシステムへの革新技術適応および実⽤化、インフラの長寿命化技術の開発 木造・木質建築の推進・技術開発、林業・加工機械分野の研究開発 EV建機の拡充、海外需要の取り込み | |
脱炭素との相乗効果・トレードオフを考慮したサーキュラーエコノミーに資する技術開発 | |
道路・空港等のインフラ整備・運営・維持管理分野において、建設、道路、機器について各社の専門分野のエンジニアリング力によるワンストップサービス | |
ガバナンス | サステナビリティに関する最新情報の提供、デジタルガバメントに対応したシステム更新 電子化による廃棄物処理事業のコンプライアンス強化、IoT活⽤による生産性向上の同時達成 共同調達・バックオフィス機能の活⽤による生産性向上、グループガバナンス体制の強化 |
指標と目標
対象 | 目標(2018年度比) | 指標 |
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スコープ1,2 排出量 | 2050年 排出実質ゼロ | 排出量の推移グラフを開示 |
2030年度 40% 削減 | ||
スコープ2 排出量 再生可能エネルギー(電力)利用率 |
2050年度 RE100 | 再生可能エネルギー(電力)利用率の推移グラフを開示 |
2030年度 RE60 | ||
スコープ3 排出量 (カテゴリ1:委託工事、購入資材) |
2030年度 40% 削減 | 委託工事及び算定可能な購入資材の排出量を開示 |
スコープ3 排出量 (カテゴリ11:自社施行建物及び製品の使用に伴う排出) |
2030年度 40% 削減 | 排出量を開示 ※ 建物の供用期間はCASBEEの用途別LCCO2算定機関 |
バリューチェーン全体の温室効果ガス
当社グループは「2050年カーボンニュートラル」に向け、エンボディードカーボン※を評価する体制を強化しバリューチェーン全体の排出量削減を進めます。インフラ運営事業でも、サプライヤーやバリューチェーンのステークホルダー間でGHG排出量削減の実効性を高めるための情報交換と共有の仕組みをつくり、環境負荷削減のワンストップサービス構築を目指します。2022年度はGHG排出量算定報告書(2021年度ホールディングスサプライチェーン排出量)の第三者検証を受けています。
※ エンボディードカーボン:建築物などのライフサイクル全体で排出されるCO2の総量スコープ | 取り組み内容 |
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スコープ1 | 施工の合理化や先進的な建設機械の使用 低炭素燃料の活用による削減 上記のような取り組みをその主体である協力会社とともに推進 アスファルト合材製造時の排出削減(フォームドアスファルト技術の推進、低炭素合材の販売) |
スコープ2 | 各事業所での省エネ活動 非化石証書等によるオフセット 再生可能エネルギー事業による気候変動対策のインフラ整備 アスファルト合材製造時の排出削減 |
スコープ3 | 【カテゴリ1:委託工事、購入資材】 資源循環と脱炭素の実現に向けて、ICIを中心としたオープンイノベーションにより技術開発を加速 インフラ運営事業のスコープ3排出量や資源循環率などの可視化・DXの推進により環境配慮調達を実現 【カテゴリー2:資本財】 アスファルト合材調達時、サプライチェーンでのGHGの削減に寄与 【カテゴリ11:自社施工建造物及び製品の使用に伴う排出】 新築と改修のW ZEBや木造・木質建築の推進等を通じて、環境と健康・生産性などの付加価値の顧客提案を推進 機械事業でのEV建機の拡充 |
前田道路では、アスファルト合材製造時に使用量の多い重油を、化石燃料由来から燃焼時CO2ゼロカウントの動植物油由来に替えるために、バイオ重油製造会社「日本バイオフューエル(株)」を設立しました。原料として廃食油だけでなく、食用油の精製副産物(油さい)、排水の油水分離槽浮上油、廃棄油脂製品等、様々な原料を利用できるのが強みです。
2023年9月から広島県の新工場で製造を始め、まずは自社のスコープ1と合材ユーザーのスコープ3削減を、次にバイオ重油を社外へも販売し、社会全体での脱炭素貢献を目指します。
サステナビリティファイナンス
当社は、2022年9月に第一回グリーンボンド発行を実施しました。また、2023年度はポジティブインパクトファイナンスの取り組みを予定しています。今後もサステナビリティファイナンスに積極的に取り組んでいきます。
第三者検証報告書
インフロニア・ホールディングスでは、報告内容に対する信頼性の確保のために、温室効果ガス排出量(スコープ1、スコープ2およびスコープ3)について、ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社による第三者検証を受審しています。
今後も、第三者検証を有効に活用し、継続的に精度向上に取り組んでいきます。
循環経済を前提としたビジネスモデルであるサーキュラーエコノミーへの転換等、国際的な動きへの対応が求められています。当社グループは、インフラの運営(発注)者、排出事業者・処理業者といった複合的な視点から、循環経済の実現に向け、製品のライフサイクルを通じた環境配慮設計の取り組みとして、資源利用の削減や影響の軽減・回避等を推進しています。当社の建設事業で利用する再生アスファルト合材の主材料や再生路盤材のほとんどは、舗装事業における破砕処理工場で再生加工された製品を利用しており、「インフラ運営の上流から下流までワンストップでのマネジメント体制」として、資源・副産物物流・スコープ3データの一元化と生産性向上及び、その社会実装モデルの構築を目指します。
建設副産物のリサイクル状況と
長期的な資源循環の取り組み
前田道路では、建設工事現場から排出されるアスファルト塊・コンクリート塊を主とするがれき類を受け入れ、年間約800万tを再資源化しています(再資源化率 概ね100%)。再資源化された再生骨材は、再生アスファルト合材の材料としての使用や、建設資材の再生路盤材として販売しています。また、天然資源利用の削減や石油代替製品の開発についても取り組みを進めています。
私たちが目指す「どこまでも、インフラサービスの自由が広がる世界。」の実現には、地球環境という土台が欠かせません。当社グループでは、調達・運用・更新を含めた全ての事業領域において、生物多様性の保全と資源の持続可能な利用に取り組み、社会・地域の安全安心とサステナビリティの実現を目指します。また、自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用するグリーンインフラを推進しています。土木・建築・舗装事業では、特に多くの自然資本の投入が必要であることから、環境負荷の低い建材の利用と資源循環モデルの構築に取り組んでいます。2022年度は地元木材を使った熊本県八代市新庁舎を建設し木造建築の普及に努めました。また、開発を行う際には、生態系の保全等を目的に環境アセスメントを実施し、絶滅危惧種の保護や近隣の生態系保護に取り組んでいます。機械事業では、森林資源の循環利用促進に寄与する林業・加工機械分野の研究開発、インフラ運営事業では、資源の持続的な利用を目指して生物多様性の保全を推進しています。
→木造建築の詳細はこちらをご覧ください。
→生物多様性の詳細はこちらをご覧ください。
前田道路は、同社小笠原営業所がある小笠原諸島にて、2022年度に環境教育プロジェクトを開始しました。産学が協力し、次世代を担う技術者となる学生を対象に、「生物多様性とインフラの共生」について学び未来へつなげることを目的としています。プロジェクトでは、まず事前勉強会を計4回開催し、現地視察では実際に自然の豊かさに触れながら現地有識者の講義を受け、現地の環境保全やインフラ整備について学びました。生物多様性や前田道路の事業など多岐にわたり理解を深め、参加した学生からは「環境へのインパクトが大きい物事こそ真摯に向き合うべきであり、そういった仕事を通して環境保全をしていきたい」という感想を貰いました。2023年度開催の第2期は、事前勉強会で外部講師を招き講演会を行いレベルアップを図ります。そして前田道路としては、環境教育プロジェクトにより得られたナレッジをもとに、今後も「人と環境にやさしい道づくり」による社会への貢献を目指します。
前田建設は静岡県浜松市において、約17.5kmにわたる防潮堤整備事業に参画しました。この防潮堤は中心部にCSG材を用いることで、津波によって周りの土砂がある程度けずられてもCSGがしっかり残って津波を緩衝する粘り強い構造体となっています。また、覆土により防災林機能の再生が可能となり、環境・景観にも配慮するほか、飛砂や塩害の助長などによる人家への影響が抑制されます。その他、地元NPOとの協働でアカウミガメ保護や希少植物の移植など、自然環境に配慮した施工を行いました。施工期間中より地元の浜松南高校と取り組んでいたカワラハンミョウの保護活動については、事業完了後も同校が取り組みを継続した結果、2021年に環境大臣賞を受賞しました。
有害物質の管理
当社グループは、建築・土木・舗装施工時、砕石・合材製造時、建機製造時等法令に基づき適正な管理を実施しています。PRTR対象化学物質使用量の管理、排水の適正な処理や、土壌汚染の未然防⽌・影響の軽減・回避等の管理を行っています。不適切な管理が発生した際のレピュテーションリスクにより、ビジネスの機会を失うリスクが想定されるため、今後も継続的な管理を行います。
前田建設は、有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)を除去する水処理装置を開発しました。本装置は、「除濁装置ユニット」と「イオン交換樹脂塔ユニット」から構成され、汎用車両に搭載して運搬が可能です。「除濁装置ユニット」で水中の浮遊性物質を除去し、「イオン交換樹脂塔ユニット」でPFOS・PFOAを除去します。今後、PFOS・PFOAの検出事例は全国で増加が予測されるため、この技術を積極的に展開する予定です。
環境法令の遵守状況
2022年度の環境法令違反件数は3件でした。
範囲:インフロニアグループ
(単位:件)
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
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水質 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
大気 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
廃棄物 | 1 | 1 | 0 | 1 | 2 |
その他(振動等) | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
合計 | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 |
水の安全保障に関する方針・考え方
当社グループは、水資源の保全を重要な環境課題と認識し、水の効率的使用やリサイクルを通じた水の使用量削減、適切な処理により、地域住民の安全安⼼な水資源の確保に努めます。大阪市工業用水道特定運営事業等や三浦市公共下水道(東部処理区)運営事業といった水道系コンセッション事業と関連し水資源の維持を行うなど、事業全体で取り組みを進めています。
当社は地球資源の恩恵を受けながら事業活動を行っていることから、事業利益の一部を株主配当と同様に投資者「地球」に還元するという考えのもと、地球への配当を通じた諸活動を推進しており、連結純利益の2%を目安に配当額を設定しています。
カテゴリー | 拠出内容 | 拠出金額(税抜) |
---|---|---|
インフロニアの森 | (MAEDAの森・ふくい) 緑化推進委員会H30年度会費 | 10,000 |
インフロニアの森 | 2022年度新入社員森林整備活動 | 2,094,435 |
インフロニアの森 | インフロニアの森・たかもり 協働の森づくりに於ける協定及び標柱作成 | 472,800 |
エコシステム | 環境教育プロジェクト/Bonin Infrastructure Initiative 2022 | 1,000,000 |
エコエイド | オイスカ『子供の森計画』への支援 | 500,000 |
エコエンジェル | 公益財団法人オイスカ 年会費拠出 | 100,000 |
エコエンジェル | チャールズ・ダーウィン財団 視聴覚資料のデジタル化支援 | 500,000 |
エコエンジェル | 福井県UIターン奨学金返還支援事業への拠出(企業版ふるさと納税) | 1,000,000 |
エコエンジェル | 日本障害者スキー連盟への協賛 | 10,000,000 |
エコエンジェル | 日本相撲協会への協賛 | 2,250,000 |
エコエンジェル | プロバスケットボールチーム「レバンガ北海道」のSDGs活動の取組みへの賛同 | 5,000,000 |
エコエンジェル | 廃プラスチック専用圧縮回収袋の試行 | 1,061,000 |
エコエンジェル | 『東京・春・音楽祭2023』への協賛 | 1,000,000 |
エコエンジェル | 非化石証書2022年度 | 24,607,062 |
エコエンジェル | 経団連自然保護基金2022年度寄附金 | 500,000 |
エコエンジェル | 公益財団法人日本交響楽振興財団2022年度賛助会費 | 200,000 |
エコエンジェル | 九州大学馬奈木教授とのESG共同研究の取り組み | 2,000,000 |
エコエンジェル | 中の島壁面緑化「ツタ募金」他支援 | 3,575,425 |
エコエンジェル | 間伐に寄与する紙を使用するサポーター企業 | 34,892 |
エコエンジェル | 長野県環境保全協会 2022年度会費 | 50,000 |
エコポイント | Me-pon運営費 | 10,297,511 |
計 | 66,253,125 |
グリーンコミット
主に環境に関する社会課題の解決を目的とした活動を支援するための仕組みです。課題ごとにカテゴリーを分け、これらに該当する活動に対して内容を精査し、支援を行っています。
SII(Social Impact Investment)
社会課題解決に資する事業や技術、アイデアを持つベンチャー企業などへの出資を通じた支援を行っています。
エコポイント制度「Me-pon」
日常生活で積極的に環境活動に取り組む社員とその家族を応援するための活動で、自主的な業務外の環境活動に対し、会社が専用のWebサイトを通じてポイントを付与します。
2010年度より自治体が設ける企業の森づくり制度を通じて「インフロニアの森 たかもり」(熊本県阿蘇郡高森町)の協定を結び、継続的に支援を行っています。現地NPO法人と協働して森林保全活動を実施する他、毎年行う森林整備活動では、社員、家族とともに森づくりの輪を広げています。
この活動も10年目を迎えました。植林や森林の下刈り等による地球温暖化抑制への貢献や、ボランティア活動を通じた地域交流への寄与など、長年の取り組みが評価された結果、2022年に熊本県の県知事表彰を受賞しました。