INFRONEER Holdings Inc. INFRONEER Holdings Inc.

環境

基本的な考え方

インフロニアグループは、事業基盤である自然資本の持続可能な利用と共生に向けて「気候変動」「資源循環」「生物多様性」「汚染防止」「水の安全保障」などの分野を軸に、長期的な視点での取り組みを進めています。加えて、インフロニア独自の「地球への配当」を通じた諸活動を推進しています。

気候変動

気候変動に関する方針・考え方

気候変動は当社グループの重要経営課題の⼀つであり、官民連携によるインフラの維持管理・修繕・更新や新規建設において、カーボンニュートラルの取り組みが加わった新たな市場が急速に拡大すると認識しています。当社は2050年までのCO₂排出量を「実質ゼロ」とし、気候変動への取り組みを強化するとともに、エネルギー使用の削減と効率化に取り組んでいます。

TCFD提言に基づく気候関連の情報開示

ガバナンス

当社グループでは気候変動を重要経営課題の一つとして認識しています。大きなリスクとして危機意識を強く持ちながらも機会として捉え、中長期経営ビジョンを掲げ、実現に向けた具体的な取り組みを実行しています。気候変動に関わる基本方針や重要事項については定期的にサステナビリティ委員会にて検討を行うとともに、取締役会の監督が適切に行われるよう体制を整えています。 体制図。取締役会→サステナビリティ委員会→インフロニア担当部門(経営戦略部、人材戦略部等)→前田建設/前田道路/前田製作所の順に指導(監督)。前田建設/前田道路/前田製作所→インフロニア担当部門(経営戦略部、人材戦略部等)→サステナビリティ委員会→取締役会の順に報告。

戦略

当社グループは、気候変動が自社の事業に大きな影響を及ぼすものと認識しています。2022年度に実施したTCFD財務分析の結果をもとに、エネルギーコスト、低炭素建材の影響、新たな市場への対応といった重点課題を抽出し、実施計画及び財務評価モデルの検討を開始しました。自らがエネルギーを大量に消費する需要家として、投資指標のインターナルカーボンプライシングを加えることで追加性のある再エネ導入を推進します。官民連携によるインフラに維持管理・修繕・更新や新規建設において、カーボンニュートラルの取り組みが加わった新たな市場が地域経済に与える付加価値を可視化することでステークホルダーエンゲージメントを高度化し、市場を拡大していきます。

リスク管理

2030年を想定した気候変動シナリオに基づく「移行」と「物理的変化」に関するリスクと機会、及びその対応を示します。

分類 リスク
/機会
内容 インパクト評価(2030年度)
1.5℃
シナリオ
4℃
シナリオ

調達 リスク 調達先が、炭素税又は再エネ導入等の低炭素化コストを製品価格に転嫁した場合のコスト増 低炭素製品、低炭素燃料への切り替えによるコスト増
直接
排出
リスク 工場設備・EV車両等への投資、再エネ導入コスト、炭素税等 低炭素商品開発・低炭素施工研究開発(費⽤対効果、投資効果)
製品
サービス
リスク 環境配慮型製品・サービス対応の遅れによる機会損失 価格優位性喪失に伴う顧客流出
機会 ZEB拡大、革新的建機(EV等)市場の拡大、低炭素建材施工の提案 再生可能エネルギー事業の需要増/官民連携市場の拡大

調達 リスク 災害の増加に伴う保険料増加 工場や輸送網の被災による、代替困難な特殊品の納期遅延、災害の激甚化による調達への影響
直接
排出
リスク 災害激甚化による工事の遅延・保険費増 施設稼働率・来客数の低下による収益低下 作業員の健康影響、生産性低下、製造工程への悪影響 空調エネルギー使⽤量増加に伴うコスト増
製品
サービス
リスク 風水害の増加による施設利⽤客の減少、施設稼働率の低下 風水害等の増加による施設維持管理費の増加 移動・輸送・リゾート系開発事業の採算性の低下
機会 災害復旧工事、災害対策工事(堤防・河川改修)の増加 建造物の強靭化・機能向上(屋内型等)、インフラ維持管理(点検、評価・診断、補修・補強、LCCO₂可視化)サービス
※ 1.5℃(2℃):2030年までは各国NDCs相当の排出制約を想定したB2DSシナリオ、 4℃:IPCC第5次評価報告書のRCP8.5シナリオを⽤いた。 ※ 経済安全保障に関する規制強化、大規模地震・火山災害に関するリスクは考慮していない。

対応策

調達 本支店、ICIの使⽤電力によるCO₂の全量をFIT非化石証書によりオフセット
協業によりサプライチェーン・ライフサイクルを通した調達改革、業界プラットフォーム構築
直接排出 ゼロカーボン合材の実現に向け、低炭素燃料の活⽤を推進するとともに、アンモニア水素バーナー等革新的技術の研究、サプライチェーン排出量の削減に向けたシナジーの発揮
グループのRE100実現のため、ネットワークを活かして再生可能エネルギー事業を拡大
製品・サービス ZEB建設・改修、再エネ施設の整備、建築環境設計(省エネ、省CO₂)の高品質化、効率化に関する開発、災害対策・復旧工事に関する技術開発
低炭素合材・建材の開発、PV、地中熱等再生可能エネルギーの効率化、省エネシステムへの革新技術適応および実⽤化、インフラの長寿命化技術の開発 木造・木質建築の推進・技術開発、林業・加工機械分野の研究開発 EV建機の拡充、海外需要の取り込み
脱炭素との相乗効果・トレードオフを考慮したサーキュラーエコノミーに資する技術開発
道路・空港等のインフラ整備・運営・維持管理分野において、建設、道路、機器について各社の専門分野のエンジニアリング力によるワンストップサービス
ガバナンス サステナビリティに関する最新情報の提供、デジタルガバメントに対応したシステム更新 電子化による廃棄物処理事業のコンプライアンス強化、IoT活⽤による生産性向上の同時達成 共同調達・バックオフィス機能の活⽤による生産性向上、グループガバナンス体制の強化

指標と目標

CO₂削減目標

対象 目標(2018年度比) 指標
スコープ1,2 排出量 2050年 排出実質ゼロ 排出量の推移グラフを開示
2030年度 40% 削減
スコープ2 排出量
再生可能エネルギー(電力)利用率
2050年度 RE100 再生可能エネルギー(電力)利用率の推移グラフを開示
2030年度 RE60
スコープ3 排出量
(カテゴリ1:委託工事、購入資材)
2030年度 40% 削減 委託工事及び算定可能な購入資材の排出量を開示
スコープ3 排出量
(カテゴリ11:自社施行建物及び製品の使用に伴う排出)
2030年度 40% 削減 排出量を開示
※ 建物の供用期間はCASBEEの用途別LCCO₂算定期間
※ グループ排出量の算定基準はGHGプロトコルに準拠(2023年3月 第三者検証取得)

バリューチェーン全体の温室効果ガス

当社グループは「2050年カーボンニュートラル」に向け、エンボディードカーボンを評価する体制を強化しバリューチェーン全体の排出量削減を進めます。インフラ運営事業でも、サプライヤーやバリューチェーンのステークホルダー間でGHG排出量削減の実効性を高めるための情報交換と共有の仕組みをつくり、環境負荷削減のワンストップサービス構築を目指します。2022年度はGHG排出量算定報告書(2021年度ホールディングスサプライチェーン排出量)の第三者検証を受けています。

※ エンボディードカーボン:建築物などのライフサイクル全体で排出されるCO₂の総量

GHG排出量スコープ1+2

スコープ1・2の数字は千 t-CO₂単位。スコープ2はマーケットベース。2018年度(基準):スコープ1は227、スコープ2は86、合計313、GHG排出量削減率は0.0%。2019年度:スコープ1は230、スコープ2は77、合計307、GHG排出量削減率は△1.9%。2020年度:スコープ1は237、スコープ2は76、合計313、GHG排出量削減率は0.0%。2021年度:スコープ1は237、スコープ2は72、合計309、GHG排出量削減率は△1.3%。2022年度:スコープ1は230、スコープ2は40、合計270、GHG排出量削減率は△13.7%。2030年度(目標):合計187、GHG排出量削減率は△40%。2050年度(目標):GHG排出量削減率は△100%。

GHG排出量スコープ3

カテゴリ1・11の数字は千 t-CO₂単位。2018年度:カテゴリ1は919、カテゴリ11は3,492、合計4,411。2019年度:カテゴリ1は490、カテゴリ11は2,401、合計2,891。2020年度:カテゴリ1は1,097、カテゴリ11は2,285、合計3,382。2021年度:カテゴリ1は915、カテゴリ11は2,525、合計3,440。2022年度:カテゴリ1は897、カテゴリ11は1,890、合計2,787。
2018年度~2019年度は前田建設のみ、2020年度は前田建設と前田製作所の合計値。
2021年~2022年はインフロニア。

事業活動の上下流における主なCO₂排出

【上流】スコープ3:カテゴリー1「委託工事・購入資材」、資本財・スコープ1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動・輸送、配送(上流)・事業から出る廃棄物の処理→【自社】スコープ1:燃料の燃焼に伴う排出、スコープ2:電気の使用に伴う間接排出、スコープ3:出張・雇用者の通勤→【下流】スコープ3:カテゴリー11「自社施工建造物および製品の使用に伴う排出」、販売した製品の廃棄・リース資産(下流)・輸送、配送(下流)。 【上流】スコープ3:カテゴリー1「委託工事・購入資材」、資本財・スコープ1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動・輸送、配送(上流)・事業から出る廃棄物の処理→【自社】スコープ1:燃料の燃焼に伴う排出、スコープ2:電気の使用に伴う間接排出、スコープ3:出張・雇用者の通勤→【下流】スコープ3:カテゴリー11「自社施工建造物および製品の使用に伴う排出」、販売した製品の廃棄・リース資産(下流)・輸送、配送(下流)。
スコープ 取り組み内容
スコープ1 施工の合理化や先進的な建設機械の使用 低炭素燃料の活用による削減 上記のような取り組みをその主体である協力会社とともに推進 アスファルト合材製造時の排出削減(フォームドアスファルト技術の推進、低炭素合材の販売)
スコープ2 各事業所での省エネ活動 非化石証書等によるオフセット 再生可能エネルギー事業による気候変動対策のインフラ整備 アスファルト合材製造時の排出削減
スコープ3 【カテゴリ1:委託工事、購入資材】 資源循環と脱炭素の実現に向けて、ICIを中心としたオープンイノベーションにより技術開発を加速 インフラ運営事業のスコープ3排出量や資源循環率などの可視化・DXの推進により環境配慮調達を実現 【カテゴリー2:資本財】 アスファルト合材調達時、サプライチェーンでのGHGの削減に寄与 【カテゴリ11:自社施工建造物及び製品の使用に伴う排出】 新築と改修のW ZEBや木造・木質建築の推進等を通じて、環境と健康・生産性などの付加価値の顧客提案を推進 機械事業でのEV建機の拡充

2023年度事例:バイオ重油

前田道路では、アスファルト合材製造時に使用量の多い重油を、化石燃料由来から燃焼時CO₂ゼロカウントの動植物油由来に替えるために、バイオ重油製造会社「日本バイオフューエル(株)」を設立しました。原料として廃食油だけでなく、食用油の精製副産物(油さい)、排水の油水分離槽浮上油、廃棄油脂製品等、様々な原料を利用できるのが強みです。
2023年9月から広島県の新工場で製造を始め、まずは自社のスコープ1と合材ユーザーのスコープ3削減を、次にバイオ重油を社外へも販売し、社会全体での脱炭素貢献を目指します。

広島の新工場

2023年度事例:フォームドアスファルト技術

前田道路は、アスファルトをフォームド(泡)化し混合性・締固め性を向上させることで、従来よりも低い温度でアスファルト合材の製造・施工を可能にするフォームドアスファルト技術によって、骨材加熱に用いる燃料使用量を減らし、CO₂排出量の削減に貢献しています。当社のフォームドアスファルト混合物「LEAB(レアブ)」は、従来のフォームドアスファルト技術の性能をさらに向上させ、混合性や締固め性などの効果の持続時間を延長することが可能となっています。
環境への負荷を軽減し、持続的発展が可能な社会を形成することに貢献すべく、事業活動における環境に配慮した工法、製品、製造工程の改良や合理化を推進するとともに、新工法や技術開発に取り組んでいきます。

フォームドアスファルト混合物施工の様子

2023年度事例:ZEB・ZEHの推進

前田建設は「2050年カーボンニュートラル」に向け、建物のZEB、ZEH※1化を推進しています。
ZEBにおいては、新築、改修に応える「W ZEB」(ダブル・ゼブ)に取り組んでいます。自社実績案件では、社内関係部署によるコミッショニング※2WGを発足し、エネルギー消費量の調査・分析から、要素技術の改良・改善を行い、運用の最適化を目指しています。
ZEHでは、得意とする集合住宅建築においてZEH-M※1の設計・施工を推進しており、一般社団法人環境共創イニシアチブが公募する、ZEH-M普及の中心的な役割を担う「ZEHデベロッパー」(C登録)に登録認定されました。
KPI(2030年度目標)として、設計施工非住宅案件のZEB採用率40%を掲げています。今後もZEB、ZEHを推進していきます。

取り組み実績・件数についての詳細はこちらをご覧ください。 新しいタブで開く

※1 ZEB・ZEH・ZEH-M(ゼブ・ゼッチ・ゼッチ・マンション):Net Zero Energy Building & Net Zero Energy House & Net Zero Energy House Mansionの略称。年間の一次エネルギー消費量が正味またはマイナスの建築物・住宅のこと。
※2 コミッショニング 建築・設備の性能が適正に発揮できているかを検証すること。
ZEB実施事例:ICI LAB エクスチェンジ棟

2023年度事例:電動化製品の開発

前田製作所では、カーボンニュートラル実現に向けて、CO₂排出量の削減に寄与する電動化製品の開発とラインナップの拡充に取り組んでいます。
現在はバッテリー仕様の「クローラクレーンCC1485」をドイツのDEUTZ社と共同開発中です。2022年10月には、ドイツのミュンヘンで開催された建設機械の展示会にコンセプトモデルを展示しました。
今後は早期量産化と市場導入にむけて、引き続き開発を進めていきます。

クローラクレーンCC1485バッテリー仕様
(コンセプトモデル)

サステナビリティファイナンス

当社は、2022年9月に第一回グリーンボンド発行を実施しました。また、2023年度はポジティブインパクトファイナンスの取り組みを予定しています。今後もサステナビリティファイナンスに積極的に取り組んでいきます。

第三者検証報告書

インフロニア・ホールディングスでは、報告内容に対する信頼性の確保のために、温室効果ガス排出量(スコープ1、スコープ2およびスコープ3)について、ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社による第三者検証を受審しています。
今後も、第三者検証を有効に活用し、継続的に精度向上に取り組んでいきます。

第三者検証報告書の詳細はこちらをご覧ください。

資源循環

循環経済を前提としたビジネスモデルであるサーキュラーエコノミーへの転換等、国際的な動きへの対応が求められています。当社グループは、インフラの運営(発注)者、排出事業者・処理業者といった複合的な視点から、循環経済の実現に向け、製品のライフサイクルを通じた環境配慮設計の取り組みとして、資源利用の削減や影響の軽減・回避等を推進しています。当社の建設事業で利用する再生アスファルト合材の主材料や再生路盤材のほとんどは、舗装事業における破砕処理工場で再生加工された製品を利用しており、「インフラ運営の上流から下流までワンストップでのマネジメント体制」として、資源・副産物物流・スコープ3データの一元化と生産性向上及び、その社会実装モデルの構築を目指します。

建設副産物のリサイクル状況と
長期的な資源循環の取り組み

前田道路では、建設工事現場から排出されるアスファルト塊・コンクリート塊を主とするがれき類を受け入れ、年間約800万tを再資源化しています(再資源化率 概ね100%)。再資源化された再生骨材は、再生アスファルト合材の材料としての使用や、建設資材の再生路盤材として販売しています。また、天然資源利用の削減や石油代替製品の開発についても取り組みを進めています。

産業廃棄物(建設)のリサイクル図

循環型社会形成システムは、破砕処理工場とアスファルト合材製造工場で構成されている。ストレートアスファルトバージン砕石・砂を用いてアスファルト合材製造工場が建設資材を工事現場に製造・販売、排出されるアスファルト塊・コンクリート塊を主とするがれき類は破砕処理工場が受入、破砕・分別し再生路盤材/再生骨材に再資源化、アスファルト合材製造工場に供給する。

循環型社会構築に向けた取り組みの実績

リサイクル率の推移

  2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
前田建設 97.2% 96.4% 95.6% 94.0% 98.1%
前田道路 - 96.7% 97.0% 96.6% 96.7%
※ データは活動量の大部分を占める前田建設・前田道路の数値を開示 リサイクル率=(総廃棄物量-最終処分量)÷総廃棄物量×100

生物多様性

私たちが目指す「どこまでも、インフラサービスの自由が広がる世界。」の実現には、地球環境という土台が欠かせません。当社グループでは、調達・運用・更新を含めた全ての事業領域において、生物多様性の保全と資源の持続可能な利用に取り組み、社会・地域の安全安心とサステナビリティの実現を目指します。また、自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用するグリーンインフラを推進しています。土木・建築・舗装事業では、特に多くの自然資本の投入が必要であることから、環境負荷の低い建材の利用と資源循環モデルの構築に取り組んでいます。2022年度は地元木材を使った熊本県八代市新庁舎を建設し木造建築の普及に努めました。また、開発を行う際には、生態系の保全等を目的に環境アセスメントを実施し、絶滅危惧種の保護や近隣の生態系保護に取り組んでいます。機械事業では、森林資源の循環利用促進に寄与する林業・加工機械分野の研究開発、インフラ運営事業では、資源の持続的な利用を目指して生物多様性の保全を推進しています。

木造建築の詳細はこちらをご覧ください。新しいタブで開く
生物多様性の詳細はこちらをご覧ください。

2023年度事例:小笠原環境教育プロジェクト ~Bonin Infrastructure Initiative~

前田道路は、同社小笠原営業所がある小笠原諸島にて、2022年度に環境教育プロジェクトを開始しました。産学が協力し、次世代を担う技術者となる学生を対象に、「生物多様性とインフラの共生」について学び未来へつなげることを目的としています。プロジェクトでは、まず事前勉強会を計4回開催し、現地視察では実際に自然の豊かさに触れながら現地有識者の講義を受け、現地の環境保全やインフラ整備について学びました。生物多様性や前田道路の事業など多岐にわたり理解を深め、参加した学生からは「環境へのインパクトが大きい物事こそ真摯に向き合うべきであり、そういった仕事を通して環境保全をしていきたい」という感想を貰いました。2023年度開催の第2期は、事前勉強会で外部講師を招き講演会を行いレベルアップを図ります。そして前田道路としては、環境教育プロジェクトにより得られたナレッジをもとに、今後も「人と環境にやさしい道づくり」による社会への貢献を目指します。

2023年度事例:貴重種キンランの保全とJHEP認証取得

前田建設ICI総合センター(茨城県取手市)の外構は、敷地全体をビオトープと見立てたランドスケープ計画に基づいて造られました。敷地の中心部には種々の水生植物が植栽された2,000㎡ほどの水辺を整備し、整備後5年経った現在、ギンヤンマなどのトンボやニホンアマガエルなどの両生類、カルガモなどの様々な野鳥が水辺を利用していることが確認されています。
また、キンランなどの希少種を保護しているコナラを中心とした既存林はそのまま保全し、新たに造成された場所には、すべて在来種によるカバープランツや中低木・高木をバランスよく配植しています。さらに、近年減っている在来種のチガヤを主体とした、まとまった草地を創生しています。
なお、ICI総合センターのICI LABでは、継続的な生物多様性保全の指標として、公益財団法人日本生態系協会による生物多様性に係る評価「JHEP認証」を重視しており、2018年に最高ランクのAAA認証を取得しました。また、2023年10月に更新認証を受け、AAA認証を維持しています。引き続き、生物多様性の保全活動に取り組みます。

ICI総合センターのビオトープ

2023年度事例:森林整備活動

前田製作所は、自然環境保護を目的に長野県戸隠地区に約5400㎡の雑木林(通称:前田の森)を保有しています。この雑木林を社員ボランティア活動を通じてCO₂吸収源として認められる森林へと整備・変化させていく予定です。森林と認められた場合、年間約4tのCO₂吸収効果が見込まれます。2022年度、前田の森では野鳥の保護を目的とした鳥の巣箱設置ボランティア活動を行いました。
また2023年度には、NPO法人主催の笹刈りボランティアへの参加(長野県戸隠地区)や、地域が主催する植樹祭へ参加(長野県白馬村)しており、地域の森林を保全する活動についても積極的に取り組んでいます。

前田の森での巣箱設置ボランティアの様子

2022年度事例:浜松防潮堤における取り組み

前田建設は静岡県浜松市において、約17.5kmにわたる防潮堤整備事業に参画しました。この防潮堤は中心部にCSG材を用いることで、津波によって周りの土砂がある程度けずられてもCSGがしっかり残って津波を緩衝する粘り強い構造体となっています。また、覆土により防災林機能の再生が可能となり、環境・景観にも配慮するほか、飛砂や塩害の助長などによる人家への影響が抑制されます。その他、地元NPOとの協働でアカウミガメ保護や希少植物の移植など、自然環境に配慮した施工を行いました。施工期間中より地元の浜松南高校と取り組んでいたカワラハンミョウの保護活動については、事業完了後も同校が取り組みを継続した結果、2021年に環境大臣賞を受賞しました。

浜松防潮堤

汚染防止

有害物質の管理

当社グループは、建築・土木・舗装施工時、砕石・合材製造時、建機製造時等法令に基づき適正な管理を実施しています。PRTR対象化学物質使用量の管理、排水の適正な処理や、土壌汚染の未然防⽌・影響の軽減・回避等の管理を行っています。不適切な管理が発生した際のレピュテーションリスクにより、ビジネスの機会を失うリスクが想定されるため、今後も継続的な管理を行います。

2023年度事例:水中のPFOS・PFOA吸着処理システムの開発

前田建設は、有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)を除去する水処理装置を開発しました。本装置は、「除濁装置ユニット」と「イオン交換樹脂塔ユニット」から構成され、汎用車両に搭載して運搬が可能です。「除濁装置ユニット」で水中の浮遊性物質を除去し、「イオン交換樹脂塔ユニット」でPFOS・PFOAを除去します。今後、PFOS・PFOAの検出事例は全国で増加が予測されるため、この技術を積極的に展開する予定です。

「除濁装置ユニット」と「イオン交換樹脂塔ユニット」の写真

環境法令の遵守状況

2022年度の環境法令違反件数は3件でした。

環境法令違反件数

範囲:インフロニアグループ

(単位:件)

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
水質 0 0 0 0 0
大気 0 0 0 0 1
廃棄物 1 1 0 1 2
その他(振動等) 0 0 1 0 0
合計 1 1 1 1 3
※ 環境法令件数には、下記のものを含む。
「書面による行政指導を受けた事項」「行政から始末書の提出を求められた事項」「行政から勧告を受けた事項」「過料を受けた事項」「過料以上の罰則を受けた事項」

水の安全保障

水の安全保障に関する方針・考え方

当社グループは、水資源の保全を重要な環境課題と認識し、水の効率的使用やリサイクルを通じた水の使用量削減、適切な処理により、地域住民の安全安⼼な水資源の確保に努めます。大阪市工業用水道特定運営事業等や三浦市公共下水道(東部処理区)運営事業といった水道系コンセッション事業と関連し水資源の維持を行うなど、事業全体で取り組みを進めています。

地球への配当

当社は地球資源の恩恵を受けながら事業活動を行っていることから、事業利益の一部を株主配当と同様に投資者「地球」に還元するという考えのもと、地球への配当を通じた諸活動を推進しており、連結純利益の2%を目安に配当額を設定しています。

地球への配当コンテンツ

グリーンコミット:インフロニアの森、エコシステム、エコスクール、エコエイド、エコエンジェル、グリーンR&D+SII(Social Impact Investment)・エコポイント制度「Me-pon」 グリーンコミット:インフロニアの森、エコシステム、エコスクール、エコエイド、エコエンジェル、グリーンR&D+SII(Social Impact Investment)・エコポイント制度「Me-pon」

2022年度「地球への配当」プロジェクトと拠出金額

カテゴリー 拠出内容 拠出金額(税抜)
インフロニアの森 (MAEDAの森・ふくい) 緑化推進委員会H30年度会費 10,000
インフロニアの森 2022年度新入社員森林整備活動 2,094,435
インフロニアの森 インフロニアの森・たかもり 協働の森づくりに於ける協定及び標柱作成 472,800
エコシステム 環境教育プロジェクト/Bonin Infrastructure Initiative 2022 1,000,000
エコエイド オイスカ『子供の森計画』への支援 500,000
エコエンジェル 公益財団法人オイスカ 年会費拠出 100,000
エコエンジェル チャールズ・ダーウィン財団 視聴覚資料のデジタル化支援 500,000
エコエンジェル 福井県UIターン奨学金返還支援事業への拠出(企業版ふるさと納税) 1,000,000
エコエンジェル 日本障害者スキー連盟への協賛 10,000,000
エコエンジェル 日本相撲協会への協賛 2,250,000
エコエンジェル プロバスケットボールチーム「レバンガ北海道」のSDGs活動の取組みへの賛同 5,000,000
エコエンジェル 廃プラスチック専用圧縮回収袋の試行 1,061,000
エコエンジェル 『東京・春・音楽祭2023』への協賛 1,000,000
エコエンジェル 非化石証書2022年度 24,607,062
エコエンジェル 経団連自然保護基金2022年度寄附金 500,000
エコエンジェル 公益財団法人日本交響楽振興財団2022年度賛助会費 200,000
エコエンジェル 九州大学馬奈木教授とのESG共同研究の取り組み 2,000,000
エコエンジェル 中の島壁面緑化「ツタ募金」他支援 3,575,425
エコエンジェル 間伐に寄与する紙を使用するサポーター企業 34,892
エコエンジェル 長野県環境保全協会 2022年度会費 50,000
エコポイント Me-pon運営費 10,297,511
66,253,125

グリーンコミット

主に環境に関する社会課題の解決を目的とした活動を支援するための仕組みです。課題ごとにカテゴリーを分け、これらに該当する活動に対して内容を精査し、支援を行っています。

SII(Social Impact Investment)

社会課題解決に資する事業や技術、アイデアを持つベンチャー企業などへの出資を通じた支援を行っています。

エコポイント制度「Me-pon」

日常生活で積極的に環境活動に取り組む社員とその家族を応援するための活動で、自主的な業務外の環境活動に対し、会社が専用のWebサイトを通じてポイントを付与します。

2022年度事例:インフロニアの森 たかもり における森林整備活動

2010年度より自治体が設ける企業の森づくり制度を通じて「インフロニアの森 たかもり」(熊本県阿蘇郡高森町)の協定を結び、継続的に支援を行っています。現地NPO法人と協働して森林保全活動を実施する他、毎年行う森林整備活動では、社員、家族とともに森づくりの輪を広げています。

この活動も10年目を迎えました。植林や森林の下刈り等による地球温暖化抑制への貢献や、ボランティア活動を通じた地域交流への寄与など、長年の取り組みが評価された結果、2022年に熊本県の県知事表彰を受賞しました。

インフロニアの森 たかもり

マネジメントシステム

インフロニアグループでは、環境安全活動の透明性や客観性を高めるための一つの手段として外部認証の取得を進めています。

ISO14001認証取得事業所比率

  2022年度
前田建設 100%
前田道路 76.3%
前田製作所 65.5%

インフロニアグループのマネジメントシステムについてはこちらをご覧ください。
前田建設: https://www.maeda.co.jp/csr/environment/em/ 新しいタブで開く
前田道路: https://ssl.maedaroad.co.jp/csr/pdf/csr2023_06.pdf#view=FitV,top 新しいタブで開く
前田製作所:https://www.maesei.co.jp/corporate/csr/ 新しいタブで開く