日本風力開発株式会社 代表取締役社長 藤谷 雅義
1996年前田建設工業入社。2023年執行役員経営革 新本部事業戦略担当兼再生可能エネルギー部長(現職)、24年1月日本風力開発取締役、24年6月 同社代表取締役社長(現職)に就任
日本風力開発株式会社 代表取締役社長 藤谷 雅義
1996年前田建設工業入社。2023年執行役員経営革 新本部事業戦略担当兼再生可能エネルギー部長(現職)、24年1月日本風力開発取締役、24年6月 同社代表取締役社長(現職)に就任
2024年1月にインフロニアグループに加わった日本風力開発の代表取締役社長に2024年6月より就任いたしました。私自身はこれまで前田建設で再生可能エネルギー事業(以下、再エネ事業)を推進してまいりましたが、事業会社のトップという重責に身の引き締まる思いです。
社会全体でカーボンニュートラルを目指すうえで、風力発電は再生可能エネルギー(以下、再エネ)の中核となる電源です。前田建設は設計・施工に強みを持ち、再エネ事業に取り組んできました。風力発電の開発から運転・維持管理までを総合的に手がける日本風力開発グループが仲間入りしたことで、インフロニアグループは風力事業の上流から下流までをワンストップで推進できる唯一無二の企業集団になりました。
総合インフラサービス企業を目指すインフロニアグループにとって、再エネ事業は一丁目一番地の重要な取り組みです。当社が再エネ事業を推進する中核となり、カーボンニュートラルなど喫緊の社会課題解決に貢献しながら収益力を拡大していくことがインフロニアグループ全体の成長につながると確信しています。
事業上のシナジー創出には、当社のガバナンスを強化することが何より重要です。当社は、元社長が贈賄罪で在宅起訴され、2023年10月に経済産業省よりコンプライアンス体制確立などの行政指導を受けました。関係者の皆様には多大なるご迷惑とご心配をお掛けしたことを、深くお詫び申し上げます。
こうした事態を二度と起こさず、ガバナンス改革を通じて信頼を回復することが、当社グループ全体にとって最優先に取り組むべき課題と認識しており、ガバナンス改革に向けて4つの取り組みを遂行します。
1点目は経営体制の刷新です。インフロニアの指名委員会が私を含めた経営陣を新たに選任しました。
2点目は社内体制の整備です。新たに法務・コンプライアンス部を設置すると共に、行動規範を制定して腐敗防止の徹底と、社員のコンプライアンス意識向上に向けた教育と人材育成、評価制度の見直しを進めています。
3点目は業務プロセスの再整備による不適切な取引の防止です。決裁権限規程を見直し、経営戦略会議や取締役会に諮る事項、インフロニアに付議する事項を明確にしました。また、不適切な取引を防止するため、契約内容は法務・コンプライアンス部や経理部が事前にチェックするプロセスに変更しています。
4点目は監視機能の強化です。新設した内部監査部による監査、当社監査役による監査に加えて、インフロニアの経営監査部による監査を行うなどチェック機能を強化しました。また、内部通報制度も整備し、さらに社外の弁護士2名と私の計3名で構成するコンプライアンス委員会を設置して、ガバナンス改革を進めています。
これらの取り組み内容は、経済産業省に報告すると共に当社サイトで公表しており、再発防止の具体的対策を確実に実施してまいります。
これまでの再エネ事業は、FIT制度※1を利用した安定的な収入を得るビジネスモデルが主流でしたが、FIP制度※2への移行に伴い、発電だけでなくCPPA※3などの電力取引を含む広範な事業領域への対応が必要になり、火力や原子力と同様に長期にわたるインフラ事業の性格が強まっています。
その点において今後の再エネ事業者は、当社のように地域と共生し、長期的な目線で事業計画を立てられる、しっかりとした事業遂行能力を持った事業者に限られてくると見ています。
従前より案件形成の難易度が高まる中、インフロニアグループのリソースを活用し、上流から案件作りのレベルアップを図り、発電だけでなく電力取引やアグリゲーションビジネスにも事業領域を拡大させ、当社の高い開発力や当社の子会社であるイオスエンジニアリング&サービスが長期にわたって蓄積したO&M(オペレーション&メンテナンス)のノウハウをさらに磨くことで、当社の企業価値を高めていきます。
また、当社がインフロニアグループに入ったことによるシナジー創出のため、グループ内で連携する機会を多く作ることが重要です。すでに前田建設との共同事業開発や技術検討、O&Mにおける前田道路との人材活用の検討、前田製作所のクレーン技術検討など、具体的な交流が始まっています。これらは各社にとって大きな刺激となっており、新たな付加価値の創造につながると期待しています。
当社は「風力事業をやりたい」という志のある従業員が集まった、一人一人のレベルが高い組織です。ただその反動でチームワークに課題があります。全員が同じ方向を向いて組織力が発揮されたとき、さらに大きな力が発揮できると感じています。そこは経営手腕が問われる部分であり、しっかりと皆をリスペクトし、力を引き出していきたいと考えています。
足元の事業環境の厳しい中でも再エネの導入拡大が求められていることは変わりません。新たなスタートを切った当社グループの役職員に自信と矜持を持って活き活きと仕事をしてもらうことが、会社の成果や成長につながっていくと信じています。
インフロニアグループが目指す「総合インフラサービス企業」の主幹をなす再エネ事業を牽引するという強い使命感のもと、事業会社のトップとして覚悟を持って取り組んでいきます。
※1 FIT制度:Feed-in Tarif(f 固定価格買取制度)の略で、再生可能エネルギーの電力を国が定めた固定の価格で一定期間買い取る制度のこと